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今枝 大輔 《interlude》

今枝 大輔
 愛知県美術館 APMoA Project ARCH vol.15 《interlude》
                             2015.6/12-7/26
 ギャラリー YEBISU ART LABO 今枝 大輔 展  2015.7/4-7/26

 今枝さんが、愛知県美術館とギャラリーYEBISU ART LABO の2ヶ所で同時に個展を開催。7月18日(土)には、愛知県美術館でアーティスト・トークがあった。
 <準備中の今枝さん(右)と美術館の方>
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 愛知県美術館APMoA Project ARCH(アーチ)の映像インスタレーション作品《interlude》は、こんな感じ。
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 展示室に入って右手を見ると、山の風景が壁一面に映し出されていた。白く雪を被った稜線、アルプスを思わせる山並みがそびえ、手前には針葉樹の林がぼんやりと見える。時折、雲が木々を覆い隠す様に流れて来る。この山の名前は判らないが、見覚えがある。ギャラリーYEBISU ART LABO 今枝大輔展のチラシにあったあの山並みだ。
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 それにしても、この映像、どことなくジオラマ写真風の印象を受ける。
 (最近のデジカメにはそんな機能があるが)
今枝さんの説明によると、これは、「私が描いた“絵”」だそうだ。針葉樹林は、紐を捩って作ったミニチュアを並べたもの。雲は、ドライアイスの霧をそれらしく流したとか。要するに全て作り物で撮影したのだ。

 この山の映像と向き合って、もうひとつの対を成す映像がある。
  <向かって右側のスクリーン>
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 どこかの森の中の様で、木々の間を縫ってカメラがまっすぐに移動していく。でも山の中にしては何か変、木の並びが規則的だ。横から見ると殆ど一直線に並んでいる様に見える。木々が並ぶ公園の横を車で移動しながら窓の外を見ているのか?それにしては、ずーっと先まで木が並び、公園にしては広過ぎ。今枝さんの説明では、「(愛知県境の)祖父江町の、鑑賞用の木々を栽培している所」で、言わば山の中の「畑」なのだ。

 展示室の反対側のコーナーには、二つの対を成す映像作品が上映されていた。ひとつは、車のフロント部分とその背景。外は土砂降りの雨で、車の屋根に激しく雨が叩きつけられる。ちょっと見るとわかるが、昔の映画によくある、(屋外ロケでなく)撮影所のセットの中で、車の後ろに背景映像を映して、いかにも運転しながらの感じを出しているあれだ。雨は、今枝さんがホースで水をかけたのだそうだ。隣の映像は、走行中の車の車内から外を写したもの。フロントウィンドウから見る外の夜景とバックミラー越しに後方を走る車が同時に見える。若干の違和感もある。通常、車内から前方を見る時と、バックミラーの位置が少しずれている様に思える。今枝さんも、撮影の為に「設置を少し調整している」と言っていた。また、夜の闇を映し出す為に、黒い布を使ったスクリーンを使用したのだそうだ。

《interlude》の意味は、「幕間(まくあい)」。今枝さんは、映像インスタレーション作品を制作する時、映画を意識しているそうだ。この作品《interlude》には、人は登場しないし、何らかのストーリーを感じさせる事もない。そうではなく、むしろあるシーンとシーンの合間にはさみ込まれた映像、まさに幕間なのだろう。よく見ると作り物とすぐわかる映像も、観客と映画作品の間にある暗黙の了解事項で成り立つものに思える。車を運転するシーン等がその典型だ。
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 撮影所内のセットで撮られたものである事を、観客は承知の上で画面を観る。そして、今まさに、幕間の映像を見ながら、これまで起きた事に思いを巡らしながら、この次に何かが起きる事を期待する。
今枝さんの作品が狙うのもそこなのではないかと思える。鑑賞者は、映像を見て、そこから何らかの記憶を呼び起こし、このあと起きるかもしれない事象に思いを巡らせる・・・。

***************************

 今枝さんの現在の作品は、映像インスタレーションなのだが、元々は油絵専攻なのだそうで、2004年頃はこの様な絵を描いていた。
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 2008年以降は、映像作品に取り組んだそうです。IMG_0453_convert_20150726212552.jpg
 最近になって、自然を全くそのままでなく少々仕掛けも施すようになった。早朝の河原で煙幕を炊く。畑作地域で、農家の人が早朝から焚火をしているのをヒントにしたそうだ。
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 こちらは、長者町のYEBISU ART LABO 今枝 大輔 展の作品。
 中央に反射板があって、プロジェクタの後ろ側に(反射)投影すると同時に、前方には反射板の影の縁に残りの画像が見える。
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 チラシの説明には、
「VHSに録画した古い映画を見返すことがある。録画された画像は荒く低解像でも、記憶の中にあるシーンはもっと明瞭で鮮やかなものだ。(略)」
 愛知県美術館の展示同様、映画を意識した作品で、何かを直接見せるのでなく、鑑賞者の記憶を呼び覚ますものと言えるだろう。
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アーツチャレンジ2015見学ツアー(廣瀬菜々&永谷一馬

アーツチャレンジ2015(2015.2/17-3/1)見学ツアー(廣瀬菜々&永谷一馬
 愛知芸術文化センター館内13か所 (2/17(火)14:00~16:15)
※案内は、選考委員の信州大学人文学部准教授の金井直(かない ただし)氏。

◇廣瀬菜々&永谷一馬 《Still life》 磁気インスタレーション作品 12階アートスペースG南
 廣瀬菜々、永谷一馬です。2007年からドイツに滞在して、あちらの大学で昨年の9月に大学院を終えたところです。
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 この作品は、全長7mになるんですけども、作品の素材は磁器です。自分たちの日常とか家とかをテーマに、素材とか作品を選んでいるんですけど、この作品に関しては、普段自分たちの身の周りにあるものを、全て家の中にあるものとか食べてるもの生活の中にあるものを、全て石膏型で型取りして、で、そのひとつひとつを特別な磁器で、鋳込んで成形します。
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 普通の磁器だと焼いたらそのままコップはコップの形で焼き上がるんですけど、元あった形が焼成する事によって変形する事を目指して、ミックスを変えて、弱いというか熱に敏感な磁器にしています。焼く前は全てこう普通の形で。例えば、キャベツがあるんですけど、キャベツだと窯に入れる前は普通に丸い形ですけど、窯に入れて、もう一回ドアを開けたら、ペチャってなっている。
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 毎回、熱によっていろんな変化があって、私たちが一切コントロールできない形の変化と言うのが、丁度その熱エネルギーを通して作られるというものです。
 日々移り行く日常みたいなものをテーマに作りました。

-金井: 磁器、焼成する事で形が変わるという事、作り手が全てコントロール出来ない要素を入れるというのは、工芸の世界であれば表に立つ方法かもしれませんが、廣瀬さん永谷さんの仕事の中でそれを持ち込むというのは、プロセスそのものを大切にするというのか、これはこれで今日的なアートの意義付けが可能ではないかと思いました。あと、この空間ですね。光を落して作品の世界を作りあげてくれたわけで、我々の期待にストレートに答えてくれた美しい展示でありました。

<質問コーナー>
Q1)このフニャッとした形は、焼いている時になるのですか?
永谷A)蝋が溶ける様な、そういう動きで。
Q1)でも粘土なんでしょう?
永谷A)そうです、石ですね。今の状態は焼いた磁器なので石の状態なんですけど、その固さ、磁器って一番固い素材なんですけど、それのとおくの柔らかい形、ミックスみたいな形を目指しています。
Q1)焼く前は乾燥させて、カチッとして
永谷A)そうですカチッとしてますが、温度と共に柔らかくなります。
Q2)フニャッとした形を狙っていると?
廣瀬A)ひとつづつの形を狙っているというか、私達の制作の根本に、自分たちの日常っていうのが、何かのきっかけとか何かによって変化するという、例えばこの作品で言うと、そういう情景と言うのがひとつのテーマなんです。変化した日常と言うのがひとつのテーマとなっていて、例えばこの作品をひとつづつ展示するという方法を取らずに、情景として見せていきたいという事で今回この展示をさせていただいてます。

Q3)全部色がついてないですが、白に拘ったのでしょうか。
永谷A)そうですね、磁器の素材の色そのもので、着色せずこれで完成です。
-金井: そのあたり試みた事はおありですか?
永谷A)いろいろやってみたけど、そうすると最初に言っていた、日常の形が変わって行くという事からずれていく部分があって、着色はやめました。

-金井: 「日常の」というのは他にどんなものを作られたんですか。今回はテーブルの上のものが並んでいますけど。
廣瀬A)例えば、日常をテーマに、自分達の住んでいる家を今テーマにして。それは紙を素材に使っていたんですけど、365日、折り紙の様な感じで自分達の家を365個作ってそれを並べた作品であるとか。 あと鳥の巣をテーマに、巣立ちという感じで自分の家の横に木で鳥の巣を作った作品であるとか。
永谷A)そういう一作一作、素材とか仕上げとか、様々な(工夫の)作品を制作し続けています。今回、日本で初めて展示の機会を頂けたので大変ありがたいと思っています。

Q4)焼成の温度によって曲がり具合が変わると思いますが、そういうコントロールはしているんですか?
廣瀬A)いろんな焼成温度で試したんですけど、焼成温度だけでなく、調合であるとかいろんな事で変化は変わってきます。なのでその時の自分たちの中で一番綺麗だろうが・・・
永谷A)いろいろ試した中で、どんどん温度を上げていくと、最後はガラス玉みたいなのが残るんですね。元あったオブジェクトがわかる範囲の変化、ぐらいのところを狙っている、そのあたりを完成としています。全て溶け切ったガラスの水たまりみたいなものは、元が何だったかわからないのでそれは行き過ぎかなと。

Q5)二人の仕事に分担であるんですか。
廣瀬A)難しいですけど。作品によります。例えば私がアイディアを出して、その設計を彼がしたりとか。彼がアイディアを出して・・という感じで、その作品によって素材が全く違うんで、作品によりけりですね。とりあえず全ての作品が、二人の話し合いの中から生まれてコミュニケーションで作っていますね。

Q6)熱による変形なので、完全なコントロールは難しいと思いますが、打率はどの位でしょう。
永谷A)結構低いですね。半分くらいは(→結構高いですね!)・・・・、3割くらいですかね。

-金井: 入って来た時の印象は、精緻な感じですが、話を聞くと磁器ならではの熱とか、ものに込められた力とかがすごく溢れて来るのを実感できて、お話を聞くととても面白かったです。ひとつひとつ見ている時の印象とは違う全体の力も大切だと思いました。
 またドイツに戻られるんですか、日本でも展示はなさいますか。
廣瀬A)とりあえず又ドイツで頑張って、同時に日本でもこれからの展覧会の機会があれば、また頑張って応募したいと思っています。
-金井: これが貴重な第1回目、我々も嬉しく思います。ありがとうございました。
廣瀬・永谷)ありがとうございました。

アーツチャレンジ2015見学ツアー(藤井龍

アーツチャレンジ2015(2015.2/17-3/1)見学ツアー(藤井龍
 愛知芸術文化センター館内13か所 (2/17(火)14:00~16:15)
※案内は、選考委員の信州大学人文学部准教授の金井直(かない ただし)氏。

◇藤井 龍 《Private Collection》 絵画&映像インスタレーション作品 12階アートスペースG北
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 始めまして、藤井龍(ふじい りょう)です。この作品は、友達の家や親戚の家のご実家に遊びに行った時に、そこに架かっている絵とか彫刻作品の感じが、非常に気になった事が、発想の原点になっています。何が気になったかというと、絵画・彫刻作品の置かれている状況の性質が、美術館やギャラリーである性質と全く異なるという事が気になって。で、その状況を集める事と、実際の作品をそこからこのギャラリーに持って来て展示する事となると、作品の所有者に作品についてのインタビューをおこなってそれも映像として残して展示する、という三つで1セットの作品を作りました。
 インタビューを通して、彼らもそれまで日常的には背景となっていた全く気にならない作品を、作品として意識しだすというのは、また面白くて。とても楽しく作りました。
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-金井: 三つの、3組と言いますか、普段家の中にある絵画・彫刻をミュージアムの中に持ち込んでみる、そしてその事に対して、持ち主の言葉を入れてみる。いくつかの仕掛けを重ねながら、展示についての展示、コレクションについてのコレクション、或はコレクションする事に対する愛とか、こう言った事に対して意識を開いてくれる作品かと思います。3組を選ばれた理由と言いますか、或は三つそれぞれどういう違いがあるのか。
藤井)全部で11人にインタビューしました。ここの空間的広さと、いろんなタイプの人を作品を集めたいと思ったので、その11人の中から3名、僕が独断で選びました。あと、この作品は、僕の青臭い問題である、結局美術って何なのかという問題にも接続していると思います。
-金井: 一番今回の会場の中では、展示室という作品が自明のものとして開かれていく、そういった場でどういった意味で展示と言うのがなされていくのか、あらためて捉えるそんな考えに満ちた作品と思います。この話の中で意外な話はなかったですか、映像として残せない様なとか。
藤井)ここで使ってない方ですが、蕎麦屋に飾ってあった絵をインタビューした時に、つい蕎麦屋の宣伝をされたのでびっくりして。いつかは展示したいと思ってますが。

<質問コーナー>
Q1)そもそも11名はどうやって探しのでしょうか。知り合いの範囲ですか。
藤井A)知合い伝手に声を掛けていただいて、知り合いの知合い、そのまた知合いくらいの方です。
Q2)11名から3名を選んだ基準みたいなものは何でしょうか。
藤井A)基準はいろいろあって難しいんですけど、今回の展示では3人とも違うタイプの作品だったり、おっしゃっている事だったり、
例えば息子さんの作品だったりとか。
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彼女の場合は、彼女の義理の母親が購入した絵だったりとか、
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彼も、結構この人はストーリーがあったんですけど、あの方は思い入れがあるのかないのかわからない、
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そういう全員違うタイプのを集めて展示してみたいと思ったので、この3人を選びました。
Q3)そこにある(飾っている)作品と言うより、それを持っている人の方に注目しているという事ですか。飾っている状況というか。
藤井A)一番最初に気になったのは、飾ってある状況です。美術館やギャラリーで飾られている作品を見るというのはかなり特殊な状況だと思うんで、全ての作品を均質な状況で見るというのは、逆に、そこにも興味があったし、又こういう家でかなりイレギュラーな形で展示されている、展示していると言っていいのかわからないけど、そういう事にもとても興味がありました。

-金井: 藤井さんは、こういった活動・制作をメインにされていたわけでないですよね。もっといろんな事をされてましたね。今回、ここに気持ちを向けた切っ掛けは?以前は彫刻も作られていましたね。
藤井A)最近は、作家の立場みたいな事をよく考えていて、自分の作品と作家という、ま彫刻とか絵画を作ったり描いたりすると、生産者としての作家ですよね。生産者としてではない作家のあり方は無いのかなという、ま考えの途中なんですけど。ま、そういう事を実践してみたかったのでこのプランをしました。

-金井: そういう実験の一端かもしれませんけども、こういう場所に開く事ができて、藤井さんにとってもとても良いチャレンジ・経験だったと思いますけど。この空間(アートスペースG)て、カーテンが空いてると日常的ですよね。閉じたミュージアムと言うより、日常とか社会とか、平均的な何かがすっと入って来るこの関係も、今回この空間で藤井さんに展示をお願いしようとした理由のひとつでありました。選考委員としてもこちら側の意図に、乗り越えるというかそれ以上の展開をして下さってありがたく思います。ありがとうございました。
藤井A)ありがとうございました。

*****************************************
<後日談>
たまたま長者町のアーティストグループ「AMR」のUstream映像を見ていたら、アーツチャレンジ2015の話をしていて、この作品が話題に取り上げられていた。上に写真を載せた「例えば息子さんの作品だったりとか」の女性は、AMRのメンバーのひとり浅井雅弘さんのお母さんだった。つまり、今回展示されているこの作品は、淺井さんの子供の時と予備校時代の作品という事。
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現美in豊川&アーチャ2015(坂本和也

現美in豊川&アーツチャレンジ2015(坂本和也
  現代美術in豊川(2015.1/17-2/22)
    &アーツチャレンジ2015(2015.2/17-3/1)

坂本和也氏は、同時期開催のふたつの展覧会(現代美術in豊川&アーツチャレンジ)に出品していた。アティスト・トークも両方で行っていたので紹介します。
◇現代美術in豊川: 《Landscape gardening ~feast~》1/17(土)13:00~ 桜ケ丘ミュージアム・2F
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 坂本和也と言います、宜しくお願いします。僕は今、北名古屋市に拠点を置きながら、絵画制作をしているんですけど、見ていただいたらわかる様にそんなに難解な方程式の上にある様な作品ではないので、目で見てもらえればいいんですけど。絵を描いていますという感じなんですけど。
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 これにも(展覧会のチラシ)書いてあるんですけど、何を描いているかと言うと主に水草を描いているんですけど。「ある事がきっかけで風景画を描こうと思いました」と、これには“ですます調“で書いてあるんですけど。そのある事というのは、3年か4年前ぐらいにありまして、それまでは全くこういう絵を描いていなかったんですけど。どうしたものかなと思って、何だろうな、路頭に迷っていた時に、「もう最後に風景がを描いて、お終いにしようか」くらいな状況に陥った事がありまして。その時に、下の深堀さん【アクリル樹脂に金魚を描く作家】は、家の中に金魚がいたって言ってたんですけど、僕は家にエビがいまして、200匹か300匹、当時いたんですけど、これだなって思って、アクアリウム(水生生物の飼育設備)って言うんですけど。
 何でそれをやっていたかというと、僕もともと鳥取県の出身なんですけど、鳥取県と言うのは豊川とすごく似ているなという、自然が日常の中に、すごく身近にある土地だったんです。そこでずっと育ったもんですから、北名古屋市に来た時、北名古屋市はあまり木とか生えていないんで、ここ豊川は木とか生えてて、いいなっと思って。それで、疲弊してしまうので家の中に自然ていうか水草を自分で取りこんで、それを愛でようっていう、それをずーっと7年間位やって来たんですけど。それをいよいよ描こうかなと思って描き始めて。よしこれを描いたらもう僕は終わろうと思ってたんですけど、でも今ここにこうやっている訳なんですけど。そういう生い立ち成り立ちがあります。
 で、一番よく聞かれる質問を聞かれる前に、めんどくさいので自分でしておくんですけど。丸が出て来るんですよ。丸が、この作品は、4個しか出てこないんですけど、この丸は何なんだとよく聞かれるんですけど、これはアマゾンフロッグピットっていう浮草なんですね。浮草を上から見たところです。「原発のマークですか?」とかいろいろ聞かれるんですけど。これは全部、基本的に水草がモチーフになっています。なので水草です。
 あと、これだけは今日言っておこうと思ったんですけど、昨日の夜、目測を誤って柱に激突してしまいまして、左に行こうと思ったら右に行ったら柱があって。で、ぶつかった瞬間に今日、話す事が全部飛んだ。でも飛んで良かったなと今は思っています。以上です。ありがとうございました。

◇アーツチャレンジ:《Landscape gardening ~breath~》2/17(火)14:00~
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 ここでのトークも豊川と同じ様な話をしていた。違うトピックを以下に記述。
 ・1日10時間描いてできた
 ・この作品が出来ると同時に、10年間吸って来たタバコをやめた
 ・アトリエは5mなので、作品を一直線でみたのはここが初めて
 ・描き方: アマゾンフロッグピットを最初に配置し、その周りから攻めていく
 ・豊川とここの作品を同時に制作した(アトリエがふたつなので)
 ・ずっとOUTPUTしていくと枯れて来る(エネルギー使う)ので、今は、絵を
  描かず水槽を潤している
  そうするとスクリュー・バリスネリア(水草の一種)を描きたいなという思い
  が沸々と湧いてきているので、次の作品はそのスクリュー・バリスネリア
  がメインとなった水草の絵になると思う
  当分水草かもしれない

坂本さんの飄々とした話し方は、女性に好評の様だった。

アーツチャレンジ2015 見学ツアー(田中里奈

アーツチャレンジ2015(2015.2/17-3/1)見学ツアー(田中里奈
 愛知芸術文化センター館内13か所 (2/17(火)14:00~16:15)
※案内は、選考委員の信州大学人文学部准教授の金井直(かない ただし)氏。

◇田中 里奈 《記憶の森をあるく》 絵画インスタレーション 地下1階フォーラム北側壁面
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 田中です、宜しくお願いします。私は、いつもは、こういった壁面に壁画を描くかたちではなくて、キャンバスを木枠に張った一般的なペインティングを描いています。これまで画面に対峙するのしか描いて来なかったんですけど、今回は特殊な場所で、階段の様な角度がついている壁と、柱に囲まれた空間が面白いなと思いまして。で、森という題材を選んだのと、柱と壁の存在が、木と木の間を潜り抜ける感覚とリンクするんじゃないかと思い、そうした性質を利用して、こういう森をイメージした作品を作りました。
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 元々、人の記憶にすごく興味がありまして、そこから考えながら描いているんですけれども、写真とかだと、一般的にその瞬間をひとつ切取る様な作品になると思うんですけど、絵画だともっと自由な事ができるなと思ったので。今回の作品は、向って右から左にかけて夏から秋に向かう様に時間軸の流れを作っています。
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 あとは、実際に森の中を歩いていたりすると、自分の(目線の)角度とかによって、視点がころころと変わると思うんですけども、そういう事を考えながらいろんな角度から、基本的には足元を見下げる様な構図になっているんですけども。
 こういう所はちょっと上から斜めに、結構上の方から結構見下ろす様な視線になっていたりとか。ここはホントに、タンポポ、見えないと思うんですけども、普通だと奥に続いている林が描かれるはずの光景なんですけども、そこをあえて描いていなくて、基本的に地面を見下げる構図になっているんですけど、そこのふたつに分かれている木のところだけは、遠くを見通せる様に木を入れて、そういう面でも画面を操作しながら描いています。
以上です。

-金井: ありがとうございます。田中さんのご提案は、まずこの場所ありきと言いますか、本当に沢山の視線や視点が開かれる場を活かすプランだったんですね。これが先行委員の中では最大の勝因として評価されたところでした。田中さん自身これまで作品を作られる時、わりと俯瞰構図であるとか、視点を意識した絵をお描きになっていましたね。
田中)ええ、そうです。
金井: ご自身が平面の中でやっておられた実験を、こういった機会にスケールアップして試みられたという事で、アーツチャレンジの主旨が活かされる制作をしていただけたと思います。

田中)スタッフの方から説明があったかもしれませんが、見るところを5ヶ所決めてありまして、右に2ヶ所、左柱の向こうに1ヶ所、正面の通路コーンの置いてある所と上のエスカレーター上った所、5ヶ所、立ち位置を決めてあります。そこに立って作品を眺めていただいて、私の身長で作っているので、(背の)高い方は低くなって見ていただけると、川とか苔とかが、繋がる様になっています。普通に白い壁に作品が掛っていて、絶対同じ構図にしか見えない作品ではなくて、立つ位置を変えると構図が変わる様になっています。良ければいろんな角度から見ていただけると嬉しいです。
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-金井: 水流をひとつのモチーフの中心にするというのは、それに限ると思いました?最初からそういうアイディアでしたか?
田中)そうですね、元々その、水・・・昔から絵画で光とか水とか風とか形が無いものをどう描いていくのかというのは、作家によって多分いろいろ考えながら描いてるんですけど、本当に個性が出るところだなと思っていて。で、丁度この刷毛を使っていろいろ描く事をやっていた時に、物質的には水がすごく興味があったので、実験的にドローイングをしていって、水流が今なら描けるなと思ったので、今回この作品にハイ。
 あとこの水流を奥から手前にジグザグの様なZ(ゼット)の様な形とかで作ると、必然的に手前、中間、奥の様な距離感が出るんですけども、そこをなるべく手前の苔の所と奥の苔は、距離がすごくあるはずなんですけれど、あえてクリーク(?)させたりとか、平面でしか出来ない事をいろいろ考えてやってます。

-金井: 水の流れだけ確かにおっしゃること、奥行きと言う話になるんでしょうけど、例えば、苔と言われているのが、結構、絵具がしっかり載ってあって、それが我々にとっての全景と後景でサイズが変わんないとか、いくつかのレイヤーが作品の中に重ね合わされていて、そこに画面の奥深さとか距離が出ているかと思いました。
 あと、今申し上げた通り、苔と言われる部分は、ご覧の通り割としっかり載っているんだけども、それ以外のところは割とこう染物の様な、あるいはステンシルで貼り付けた様な、いかにも綿布に描かれたらしいテクスチャーと油絵らしい濃密さが画面のメリハリになって。愛知県美の皆さんの前ですが、何かこう、春草と光琳が一変にこの場に現れてくれたかの様な、さわやかな作品だと思います。

<質問コーナー>
Q1)視点を変えるとの話がありましたが、日本画ではその様な事をやっていたかなと思いますが、視点を変えた方が面白いというのか、苔とかそのようなものを描きたかったのか、どうなのでしょう。

田中A) それは両方ありまして、例えば視点を変えているところから話していくと、絵画、すごく自由度が高い素材で、描くのであれば、ひとつの方向からではなくて・・、例えば記憶を描くのに、一瞬の記憶であれば、ひとつの視点で事足りると思うんですけど、年月を重ねたりですとか、5分間歩いている記憶を一枚の絵に入れるとなった時、ひとつの視点からでは無くて沢山の視点で、自分が経験してきた目で見た光景をひとつの絵画にまとめられると、私が経験した5分間をひとつにまとめられるじゃないかなと思ったのが、始まりです。
 日本画もあると思うんですけども、有名なところだとピカソとかが、目の位置とか顔の角度とか鼻の向きとかすごくいろいろ操作して描いているのも、多分そういう所につながるんじゃないかな、と私は思っています。あとは、ここの植物が逆向きに配置されているのは、昔の因果絵画(→絵因果経(えいんがきよう): 仏伝経典のひとつで、下段に経文を書写し、上段に経文の内容を説明した絵画を描いたもの)とかは、結構そういうのが多くて、手前が大きくて後が小さいみたいな遠近法とか、手前がはっきりしていて奥がぼやけている様な空気遠近法(→戸外の風景に於いて、遠景に向かうほどに対象物は青味がかって、且つ、輪郭線が不明瞭になり、霞(かす)んで見える現象を利用したもの)ではなくて、インド絵画だと奥も手前も結構同じ様な感じで扱われていて、それもちょっと面白いなと思って、そこからも発想を得ています。

-金井: この場所が、否応なく持っている複数の視点であるとか、複数の距離を作品のなかでがっちりと受け止められた印象を持ちます。中々難しい場所だったと思うんですけど、長くここに滞在されて制作されている様子でした。ありがとうございました。
田中)ありがとうございました。

*****************************************

後日、作品を見ていたら、田中さんにお会いした。
5ヶ所の立ち位置からの構図を、どの様に描いたのかを伺った。
 「壁側の絵から制作を始めて、ある程度描いたところで、柱部分に取り
  掛かりました。立ち位置から見て絵がつながる様に構図を決めました」
制作は、3ヶ月程費やしたそうで、展示が2週間で終わるのは、
 「ちょっと残念です」
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ゆでたまご

Author:ゆでたまご
鑑賞者の目で現代アートを探求

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