今枝 大輔 《interlude》
今枝 大輔
愛知県美術館 APMoA Project ARCH vol.15 《interlude》
2015.6/12-7/26
ギャラリー YEBISU ART LABO 今枝 大輔 展 2015.7/4-7/26
今枝さんが、愛知県美術館とギャラリーYEBISU ART LABO の2ヶ所で同時に個展を開催。7月18日(土)には、愛知県美術館でアーティスト・トークがあった。
<準備中の今枝さん(右)と美術館の方>

愛知県美術館APMoA Project ARCH(アーチ)の映像インスタレーション作品《interlude》は、こんな感じ。

展示室に入って右手を見ると、山の風景が壁一面に映し出されていた。白く雪を被った稜線、アルプスを思わせる山並みがそびえ、手前には針葉樹の林がぼんやりと見える。時折、雲が木々を覆い隠す様に流れて来る。この山の名前は判らないが、見覚えがある。ギャラリーYEBISU ART LABO 今枝大輔展のチラシにあったあの山並みだ。

それにしても、この映像、どことなくジオラマ写真風の印象を受ける。
(最近のデジカメにはそんな機能があるが)
今枝さんの説明によると、これは、「私が描いた“絵”」だそうだ。針葉樹林は、紐を捩って作ったミニチュアを並べたもの。雲は、ドライアイスの霧をそれらしく流したとか。要するに全て作り物で撮影したのだ。
この山の映像と向き合って、もうひとつの対を成す映像がある。
<向かって右側のスクリーン>

どこかの森の中の様で、木々の間を縫ってカメラがまっすぐに移動していく。でも山の中にしては何か変、木の並びが規則的だ。横から見ると殆ど一直線に並んでいる様に見える。木々が並ぶ公園の横を車で移動しながら窓の外を見ているのか?それにしては、ずーっと先まで木が並び、公園にしては広過ぎ。今枝さんの説明では、「(愛知県境の)祖父江町の、鑑賞用の木々を栽培している所」で、言わば山の中の「畑」なのだ。
展示室の反対側のコーナーには、二つの対を成す映像作品が上映されていた。ひとつは、車のフロント部分とその背景。外は土砂降りの雨で、車の屋根に激しく雨が叩きつけられる。ちょっと見るとわかるが、昔の映画によくある、(屋外ロケでなく)撮影所のセットの中で、車の後ろに背景映像を映して、いかにも運転しながらの感じを出しているあれだ。雨は、今枝さんがホースで水をかけたのだそうだ。隣の映像は、走行中の車の車内から外を写したもの。フロントウィンドウから見る外の夜景とバックミラー越しに後方を走る車が同時に見える。若干の違和感もある。通常、車内から前方を見る時と、バックミラーの位置が少しずれている様に思える。今枝さんも、撮影の為に「設置を少し調整している」と言っていた。また、夜の闇を映し出す為に、黒い布を使ったスクリーンを使用したのだそうだ。
《interlude》の意味は、「幕間(まくあい)」。今枝さんは、映像インスタレーション作品を制作する時、映画を意識しているそうだ。この作品《interlude》には、人は登場しないし、何らかのストーリーを感じさせる事もない。そうではなく、むしろあるシーンとシーンの合間にはさみ込まれた映像、まさに幕間なのだろう。よく見ると作り物とすぐわかる映像も、観客と映画作品の間にある暗黙の了解事項で成り立つものに思える。車を運転するシーン等がその典型だ。

撮影所内のセットで撮られたものである事を、観客は承知の上で画面を観る。そして、今まさに、幕間の映像を見ながら、これまで起きた事に思いを巡らしながら、この次に何かが起きる事を期待する。
今枝さんの作品が狙うのもそこなのではないかと思える。鑑賞者は、映像を見て、そこから何らかの記憶を呼び起こし、このあと起きるかもしれない事象に思いを巡らせる・・・。
***************************
今枝さんの現在の作品は、映像インスタレーションなのだが、元々は油絵専攻なのだそうで、2004年頃はこの様な絵を描いていた。

2008年以降は、映像作品に取り組んだそうです。
最近になって、自然を全くそのままでなく少々仕掛けも施すようになった。早朝の河原で煙幕を炊く。畑作地域で、農家の人が早朝から焚火をしているのをヒントにしたそうだ。

こちらは、長者町のYEBISU ART LABO 今枝 大輔 展の作品。
中央に反射板があって、プロジェクタの後ろ側に(反射)投影すると同時に、前方には反射板の影の縁に残りの画像が見える。


チラシの説明には、
「VHSに録画した古い映画を見返すことがある。録画された画像は荒く低解像でも、記憶の中にあるシーンはもっと明瞭で鮮やかなものだ。(略)」
愛知県美術館の展示同様、映画を意識した作品で、何かを直接見せるのでなく、鑑賞者の記憶を呼び覚ますものと言えるだろう。
愛知県美術館 APMoA Project ARCH vol.15 《interlude》
2015.6/12-7/26
ギャラリー YEBISU ART LABO 今枝 大輔 展 2015.7/4-7/26
今枝さんが、愛知県美術館とギャラリーYEBISU ART LABO の2ヶ所で同時に個展を開催。7月18日(土)には、愛知県美術館でアーティスト・トークがあった。
<準備中の今枝さん(右)と美術館の方>

愛知県美術館APMoA Project ARCH(アーチ)の映像インスタレーション作品《interlude》は、こんな感じ。

展示室に入って右手を見ると、山の風景が壁一面に映し出されていた。白く雪を被った稜線、アルプスを思わせる山並みがそびえ、手前には針葉樹の林がぼんやりと見える。時折、雲が木々を覆い隠す様に流れて来る。この山の名前は判らないが、見覚えがある。ギャラリーYEBISU ART LABO 今枝大輔展のチラシにあったあの山並みだ。

それにしても、この映像、どことなくジオラマ写真風の印象を受ける。
(最近のデジカメにはそんな機能があるが)
今枝さんの説明によると、これは、「私が描いた“絵”」だそうだ。針葉樹林は、紐を捩って作ったミニチュアを並べたもの。雲は、ドライアイスの霧をそれらしく流したとか。要するに全て作り物で撮影したのだ。
この山の映像と向き合って、もうひとつの対を成す映像がある。
<向かって右側のスクリーン>

どこかの森の中の様で、木々の間を縫ってカメラがまっすぐに移動していく。でも山の中にしては何か変、木の並びが規則的だ。横から見ると殆ど一直線に並んでいる様に見える。木々が並ぶ公園の横を車で移動しながら窓の外を見ているのか?それにしては、ずーっと先まで木が並び、公園にしては広過ぎ。今枝さんの説明では、「(愛知県境の)祖父江町の、鑑賞用の木々を栽培している所」で、言わば山の中の「畑」なのだ。
展示室の反対側のコーナーには、二つの対を成す映像作品が上映されていた。ひとつは、車のフロント部分とその背景。外は土砂降りの雨で、車の屋根に激しく雨が叩きつけられる。ちょっと見るとわかるが、昔の映画によくある、(屋外ロケでなく)撮影所のセットの中で、車の後ろに背景映像を映して、いかにも運転しながらの感じを出しているあれだ。雨は、今枝さんがホースで水をかけたのだそうだ。隣の映像は、走行中の車の車内から外を写したもの。フロントウィンドウから見る外の夜景とバックミラー越しに後方を走る車が同時に見える。若干の違和感もある。通常、車内から前方を見る時と、バックミラーの位置が少しずれている様に思える。今枝さんも、撮影の為に「設置を少し調整している」と言っていた。また、夜の闇を映し出す為に、黒い布を使ったスクリーンを使用したのだそうだ。
《interlude》の意味は、「幕間(まくあい)」。今枝さんは、映像インスタレーション作品を制作する時、映画を意識しているそうだ。この作品《interlude》には、人は登場しないし、何らかのストーリーを感じさせる事もない。そうではなく、むしろあるシーンとシーンの合間にはさみ込まれた映像、まさに幕間なのだろう。よく見ると作り物とすぐわかる映像も、観客と映画作品の間にある暗黙の了解事項で成り立つものに思える。車を運転するシーン等がその典型だ。

撮影所内のセットで撮られたものである事を、観客は承知の上で画面を観る。そして、今まさに、幕間の映像を見ながら、これまで起きた事に思いを巡らしながら、この次に何かが起きる事を期待する。
今枝さんの作品が狙うのもそこなのではないかと思える。鑑賞者は、映像を見て、そこから何らかの記憶を呼び起こし、このあと起きるかもしれない事象に思いを巡らせる・・・。
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今枝さんの現在の作品は、映像インスタレーションなのだが、元々は油絵専攻なのだそうで、2004年頃はこの様な絵を描いていた。

2008年以降は、映像作品に取り組んだそうです。

最近になって、自然を全くそのままでなく少々仕掛けも施すようになった。早朝の河原で煙幕を炊く。畑作地域で、農家の人が早朝から焚火をしているのをヒントにしたそうだ。

こちらは、長者町のYEBISU ART LABO 今枝 大輔 展の作品。
中央に反射板があって、プロジェクタの後ろ側に(反射)投影すると同時に、前方には反射板の影の縁に残りの画像が見える。


チラシの説明には、
「VHSに録画した古い映画を見返すことがある。録画された画像は荒く低解像でも、記憶の中にあるシーンはもっと明瞭で鮮やかなものだ。(略)」
愛知県美術館の展示同様、映画を意識した作品で、何かを直接見せるのでなく、鑑賞者の記憶を呼び覚ますものと言えるだろう。
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