アーツチャレンジ2016高松明日香
期間: 2016年2月23日(火)〜3月6日(日)
場所: 愛知芸術文化センター
高松明日香 : 《Details》
愛知芸文センターの地下2階・通路壁に、大小様々なサイズの絵画が並べられていた。何かの場面を描いていると思うのだが、少々眺めていてもわからない。風景もあれば、室内やテーブルの上のもの、その周りに人、等々、何の”Detail”なんだろうか。で、高松さんに聞いてみた。

「これは、主にSF映画のDetailというか、SF映画、またはSFじゃなくてもSF的に感じる映画の一場面を切取って、絵にしました。例えば、《デジャブ》っていう作品ですが、これは「バックトゥーザフューチャー」(以下BTF)ですね」
◇《デジャブ》

「BTFの場面を使った作品は結構あって、その瓶が並んでる《新ビル群》や、この窓の《兆候》がそうです」
◇上《新ビル群》 下《乳製品の丘》

◇《兆候》

あの手紙を書いてる《あなたへ》もそうですし、あの端の塊は全部BTFです。
◇《あなたへ》と小作品群

結構、BTFばかりの様に見えますが、SFシーンだけじゃなくて、何か関係性を感じるものも取り上げています。例えば、この作品《惑星間であるいはその惑星の中に》だとローソクとローソクの関係とか、その人物とレモンとかです。
◇《惑星間であるいはその惑星の中に》

その隣の《新ビル群》だと、瓶(ビン)同士の関係とか。背景と人物の関係とか、なんかこうテレパシーで関係しあっている様な、イメージって言ったらいいんですかね」
-それは映画のストーリーとは別ですか?
「映画のストーリーとは、全く関係ないです。そのシーンから自分が感じた事です」
-《アンテナ体》を見ていたら、映画のシーンを見たままでなくて、加工しているのがわかります。空の部分で木(の上部)がカットされているから、映画の1シーンの画面そのものではないですね。
◇《アンテナ体》

「そうです、組合せてます。組合せているのは、この《アンテナ体》と、《乳製品の丘》みたいに、背景と手前を組合せたり、あと手紙を書いている《あなたへ》も、奥の風景は残しているというか、手前の部分と奥の風景は別のシーンから抜き出しているんですね」
◇《乳製品の丘》

◇ 《あなたへ》

-気に入ったシーンを単に切取ったそのものではなく、自分の意図した画面を作ろうと・・。
「混在してますね。なんて言いますか、あまり意図的過ぎるとわざとらしくなってしまうので。何かを組合せて作品にしたいというより、たまたま合うなーと思って合わせた、っていう感じでしょうかね。何かこうしたいという像があって、それに近づけて行くんじゃなくって、そこにあったものを、たまたま合わせたみたいな」
-たまたまいい(シーン)のがあったから持ってきたみたいな
「そうです。そんな感じです。船の港のシーン、船乗り場の場面だった(ような)、何か旅立つみたいな風だなーって思って、合わせたかったという」
-いろんな映画を見ていて、あぁ、あのシーンがいいかなとか思い浮かべたと。
「そうですね、とりあえずプリントして出してみて、いろいろ見ながら、壁に貼ったりとかしながら、これとこれは、いいかな-とか。描きながら決めたり」
-どうしてもあのシーンが、というより、いろんな素材を並べていくという
「ま、プリントするまで行く画像は、やっぱりどれも気に入っているものなので、お気に入りのカラーに合わせてるという方が近いです。そんなに気にならないものなら描いてないです。どれもこれも気になる、みたいな」
-少しぼやーっとなっている《伝言》は、スターウォーズの一場面ですか?
◇《伝言》

「あ、そうですね。お姫様が、メッセージを言うシーンですね。
当初、チラシを印刷する段階では、(この展示全体をDetailsでなく)《スペースオペラ》っていうタイトルを考えていて、もうちょっと描くものも宇宙っぽくしたいなーっていう構想があったんですけど、描いてるうちに、でもそうじゃないなーっと思って。この作品《伝言》は、ほんとに最初の方に描いたものなので、ちょっと名残が、残っている感じです」
-ちなみにY字のあの木の作品《アンテナ体》は、どういう映画なのでしょうか
「これは「ドンファン」っていう、そんなに有名じゃない映画ですけど、主人公は、あのパイレーツオブカリビアンの人、ジョニ-・デップなんですけど、あんまりヒットしなかったです。面白かったですけど」
※「ドンファン」 (1995米映画):
スペインの伝説上の漁色家ドン・ファンが現代に甦った話
「なんかその、外国の人は、庭をわりとオープンな感じで作ってるって言うか、何かの象徴として家がよく出て来るんですね。この間見た映画「007スカイフォール」でも、自分が生まれた家に帰るというか、家の中で繰り広げられる事。どっかに出かけるわけじゃないけど、家族のやり取りとかも、全部その家の中で起こるみたいな」
-(スカイフォールでは)最後は、家に戻って決着をつける・・
「そんな感じです。回りまわってまた帰るみたいな。なんかそれが、家の中の風景につながるって言ったらいいんですかね。《バリア内》の窓の感じ。あれは内部から外を見ている、何か内と外みたいな。はっきりこうだと言えないですけど」
◇《バリア内》

-(絵を並べているが)全体としてのストーリーはあるのですか?
「そうですね、ストーリーは、取り立ててこの人物がこういってこういってていうのは、無いんですけども。でも何か、繋がっているきざしが」
-全体として繋がっている気持ちが・・
「そうですね、気持ち、まさにそうですね。今、並べて見て、自分で見て見ると、例えばあの《アンテナ体》という大きな作品の横に、似た様な木を、描いている時には気が付かなかったんですけど、この構図似てたんだなとか、それを繋ぎ合せて、こう、アンテナの横にアンテナがある、テレビがあったり。なんかこう、描いている時は気が付かなかったんですけど、なんか繋がってるなーっていう。その下は、受信されたものみたいのがあったり、何かうまく表現できないですけど。明確にストーリーがあるわけじゃないですけど、何となく繋がって」
◇《アンテナ体》と小品群

-繋がりつながりで来ているというか
(※他の人も会話に加わり)+景色だとか、人だとか、その選び方はどうやって。一般に、風景描く人は風景を、人を描くなら人、そればかりだけど、作家としてこれはどんなこだわりで選んだんですか。
「こだわりは無いわけでないですが、卓上に広がる風景、みたいなのに興味があったって言ったら良いんですかね。誰かが何かをした跡の様な。箱庭みたいなイメージですかね。そこには「手」がないと作れないし。大きく言えば映画のワンシーンを描くというのがあるので、それが大元で、あんまり内容、人がいるとかいないとかには、そんなにこだわらないです」
+自然とか生物に焦点あてるとわけでない。
「展覧会毎に、例えば自分でテーマを設けて、今回は女性を描いてみよう、みたいな時は女の人ばっかり描いたりしますけど、今回は、もうちょと大きく捉えたかったので、いろんなものを描きたかった」
+アーツチャレンジに向けてのシリーズで?
「あ、そうですね。全部この壁の為の作品ですね」
+(最初から)この壁だと分かっていたわけでないでしょ。
「11月にはもうわかっていたので、それから(せっせと作った)」
◇キャプチャ側からの全体

-パッと見ると色合いが、少し淡い感じがするんですが、それは意識してですか?隣(水野里香さん)は、ハッキリした感じですが。
+暖色系は使わない?
「赤とかも使いますが、描いていると自然に青系統に寄って来るという癖があるのと、後は黒色を使わなくって、黒っぽいところは混色して作っています。あんまりガクンと(色彩・明暗の)差が出ない様にしています。一層、膜があって、その向こうにある様な。描いているものも膜があるし、自分と絵の間にもスクリーンがある様なイメージといったらいいのか。それで薄っぽいというかグレーの感じに。距離があるというか」
-境界を隔てている・・
「向こう側というか。自分を表現するという気持ちで描いているのでなく、自分の気持ちを画面にぶつける、というスタイルを持っているわけでないので。なので、ちょっと透明なって言う気持ち」
+あれは実物置いて、写真で?
「画像ですね。(映画の)画像をプリントして、映画のワンシーンを描いているので、画像を見て描いてます」
+本当に映画のワンシーンにあるの?
「本当にあります。この《惑星間であるいはその惑星の中に》は、カラヴァッジョっていう(1600年頃、バロック絵画)画家の映画で、弟子が、なぜかわからないですが、レモンを切ってました。あのナイフは、スパチュラっていう、絵具を練る道具なんです。右側に石の上にナイフが乗ってて、黒い絵具を練った後みたいなのがあるんですけども。(天才画家だが訳あって)殺人を犯すという、デレク・ジャーマン監督の映画です」
◇《惑星間であるいはその惑星の中に》

「他に、バックトゥーザフューチャー、スターウォーズ、インセプションとか。《幕間》の水しぶきは、デカプリオが出ていた映画インセプションの一場面です」
◇《幕間》

「こだわらずに沢山いろんなものを見ています。《ワイプ画面》の横顔は、マイフレンドフォーエバーという映画で、丁度ボートに乗ってて橋の下をくぐって見上げているところです」
※「マイフレンドフォーエバー」(1995米映画)HIV感染の少年との友情物語
◇《ワイプ画面》

◇高松明日香さん