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國府理(追悼)

國府理が亡くなった。
美術手帖の7月号に、「追悼 國府理」(ヤノベケンジ 文)が載っているの見て驚いた。今は、青森の方で個展を開催していたはずだが。ネット検索をしてみると、その様な新聞記事があった。

「造形作家、企画展の会場で事故死か」・・・・・・・・ 
 4月29日午後6時ごろ、青森公立大国際芸術センター青森の展示場で、造形作家の国府理(こくふおさむ)さん(44)が、アクリル製温室(自身の作品)内で倒れているのを同センターの職員が発見。市内の病院に搬送されたが、死亡が確認された。温室は縦2.3m、横4.5m、高さ2.7m。内部には軽乗用車1台があり、一定の間隔でエンジンがかかる仕組みだった。国府さんはエンジンの点検を1人でしていたらしい。当時は閉館後で、展示作品のメンテナンス中に事故が起きたとみている。
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その後、「國府理展 相対温室」は、中止。国際芸術センター青森は6月末まで休館となった。
相対温室_convert_20140629204718

國府さんの名前を初めて知ったのは、2013年あいちトリエンナーレの出展アーティスト一覧だ。その時、私は、あいトリのガイドボランティアに応募し、各アーティストの情報収集の最中だった。丁度、國府さんは、西宮市の大谷記念美術館で、個展「未来の家」を行っていた。展覧会の作品画像を見ると、屋根にプロペラを取り付けた車、ヨットの帆を付けたバイク、ロボットクジラ、パラボラアンテナを器にした小さな庭、等々。「この人はメカ好きなんだな」 私もメカ好き人間なので、その辺りはハートにツンと来るものがあった。アーティストトークもあったので、何とか見に行こうと思ったものの、都合がつかず、断念。今思えば、他のものを犠牲にしてでも行くべきだった。後になって後悔する。「次」など、そう都合よくやって来ないのは、いつもの事なのに。

今も気になる、國府さんの作品ふたつ。
展覧会のタイトルにもなっていた《未来の家》
IMG_5012_convert_20140629204811.jpg

温室そのものであるこの家は、移動用のキャタピラーと、高さを変えるためのパンタグラフの支柱を持つ。家の中の生物の為に、より良い環境を目指して移動し、高さを変える。(←図録より) 見ると家の中には植物もいる。最適な環境を求めて、植物までもいっしょに、家自らが移動する。そこに人は存在しているのだろうか?人がいなくなり、移動手段を手に入れた植物が、より良い環境を求めて歩き回る。そんな事も想像してしまう。「植物だって歩きたい」

《ROBO Whale》
頭がワーゲン(車)のフロントで、その後ろに金属の骨(背骨、肋骨、ヒレ)。背中にエンジンとプロペラ。操作しているのが、國府理さん。
IMG_5016_convert_20140629204846.jpg

工事現場からクジラの骨が出土すると言う話から想像が膨らむ。(←図録より)
海面上昇で都市が海中に没した後、地中のクジラ(の骨)が機械と融合。その後、再びその地層が地上になった時、鉄でできたクジラは、地上に現れるが、そこは砂漠。背中のエンジンとプロペラを使って海を探し、飛んでいく。最後に、海にたどり着くが、金属で出来た体では、海に入る事ができず、そのまま飛び続けているだけ。
IMG_5018_convert_20140629204910.jpg
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もうひとつ作品を紹介します。《水中エンジン》
ご存知の方も多いでしょう。國府作品の特徴がよく出ています。
IMG_5022_convert_20140629235247.jpg

大きな水槽の中に吊り下げられた自動車のエンジン。空気の取入れ口、エンジンの排気口は、水槽上のパイプにつながっています。勿論、ちゃんと動きます。通常、エンジン(内燃機関)の効率は33%位です。つまり、吸入したガソリンの持つエネルギーの1/3しか動力として取りだしていません。では残りの2/3は、どこへ? 答:「熱となって冷却水に吸収される、又は排ガスとなって外に放出」です。
この作品では、水槽の水は温水に変わったと思います。観客の方々は、その暖かさを体感したでしょうか。

最後の個展となった「相対温室」の内容はよくわかりません。が、人が生きる為の環境の枠を広げ、快適な環境を維持する為に過大なエネルギーを使っている様に見える、と言った事が背景にあるようです。

國府さんは、1970年生まれで、子供の頃、「スーパーカーブーム」の洗礼を受けたとか。私はその頃もう子供ではなかったですが、あの熱狂振りは今でも思い出します。車がまだ夢の対象になり得た頃ですね。
國府さんも車が好きだったのでしょう。作品の中に車がよく使われるのを見てもそれが伺えます。快適な生活を実現するための車を維持するには、多大なエネルギーを必要とする事も判り過ぎる程わかっていたのでしょう。だから、車を捨てようと、車反対と言っているわけでもありません。それは、全ての工業製品に言える事ですし、私たちが渇望している快適な環境そのものに言える事でしょう。國府さんは、その様な私たちの価値観に、なぜそうなっているのか、何を求めようとしているのか。「相対温室」の中で、自分自身に問い掛けると共に、私達にそれを考えて欲しいと思っていたのかもしれません。

ご冥福を祈ります。
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