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2014年ふり返り(2)ACOP

今回は作品展示の話ではなく、京都造形芸術大学 アートプロデュース学科で行われた対話型鑑賞会の「鑑賞者ボランティア」に参加(2014年10月~12月)した話です。

京都造形芸術大学 アートプロデュース学科とは: (※京都造形芸術大学のサイトから引用)
アートを広めるための人材を育てている学科(通称ASP学科)で、「アートと社会を結ぶ」プロフェッショナルを育てることを目標としています。このASP学科の福のり子教授の研究室では、2004年度よりACOP / エイコップ(Art Communication Project)を立ち上げ、対話を基本とした鑑賞教育の研究及び普及に取り組んでいます。
ACOPとは、「みる、考える、話す、聴く」の4つを基本とした対話型の美術鑑賞教育プログラムです。美術史等の知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションを通して、美術作品を読み解いていく鑑賞方法を提唱しています。
(福のり子教授)  ※注:ACOPは傘立ての意味ではありません
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毎年、ACOP対話型鑑賞会「鑑賞者ボランティア」の募集がありましたが、毎回見逃していて今回ようやく応募に漕ぎ着けました。この鑑賞会は、ASP学科の学生さんが、対話型鑑賞のナビゲーターの実践の場(単位取得には必須?)として活用するものです。ボランティアは、(学生)ナビゲーターに導かれながら対話型鑑賞を行うわけですね。
鑑賞会を始める前に、ボランティアに向けての説明会(10/25)があり、福のり子先生から、ACOPの目的やボランティア募集の主旨(※①「コミュニケーションを通した作品鑑賞」の体験、②学生にナビゲイター実践の場を提供)、それと心構えについても少々説明がありました。
いろんな所で聞かれる話ですが、美術館等で作品を見る時間は1作品当たり10秒だとか、キャプションをじっくり読んで作品はチラ見とか・・・、誰にでも思い当たる事ですね。そうではなくて、じっくりと時間をかけて作品を鑑賞しましょう、自分の感想を述べたり他の方の話も聞きましょう、と言うのが(ざっくりですが)ACOPの主旨です。

鑑賞会は、3回(11/16、11/30、12/14)ありました。時間は、休憩を含めて10:00-12:30。この中で4点の作品を扱います。作品毎に担当ナビゲーター(学生)が割り当てられ、1作品当たり30分程(意見交換が活発になると40分にも)の時間で、ボランティア同士が意見交換しながら作品鑑賞を行います。ナビゲーターは作品鑑賞を補助する様に、発言を促したり、作品の情報を提供して鑑賞者と作品のコミュニケーションを支援します。
(画面の横にいるのが、ナビゲーター この方は先生ですが)
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(後ろで、頬杖を付いているのが、福先生)
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作品は、知っているものもあれば、初めてものもあります。どれにしても最初は、プロジェクターで映し出された作品の画像をじっくり(2~3分でしょうか)見ます。その後、ナビゲーターが「どの様な印象を受けたか」「表情をどの様に感じたか」「これは何か描かれているのでしょう」etcの様に、鑑賞者に発言を促します。ある程度意見や感想が出たところで、ナビゲーターから作者や作品の内容について簡単な情報提供があり、それにより鑑賞者の意見が深まって行きます。「みる、考える、話す、聴く」を繰り返すわけです。
そうしますと、初めて見る作品でも作者の意図がおぼろげに見えてきますし、既に過去に見た作品でも、その理解が深まって行きます。作品のひとつに、私の好きなアンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」がありました。今まで幾度となく見てきた作品ですが、この鑑賞会で更に理解が深まった様に思います。
(※図録からの写真)
クリスティーナの世界

クリスティーナの家が、アンドリュー・ワイエスの家(避暑用の別荘?)の近くにあり、そこで知り合ったそうです。クリスティーナは、ポリオ(小児麻痺)の為、歩く事ができません。しかし、他人の世話になる事を拒み(車いすさえ拒み)自分の腕だけで床を這って移動したそうです。勿論、外でも。元々体の弱かったワイエスは、そんな彼女の力強く生きる姿に感銘を受け、この作品を描いたそうです。一説によると画面左下の外側辺りに、両親の墓があるとか。家から墓まで這って来て、また弟との二人暮らしの自宅に戻るところです。

他の鑑賞者との会話を続けていく中、ワイエスの感動は、「力強く生きる」だけなのだろうかとの疑念が湧きました。ピンク色のワンピース(クリスティーナの好きな色だとか)を着て、まっすぐに背筋を伸ばし、顔を家の方向に向ける。家の周りの草地も少し明るく見えます。このキャンバスに見える範囲が、クリスティーナに取って世界の全て。でもその中で精一杯“明るく”生きている彼女に感動し、尊敬の念を抱いたのではと思うに至りました。後姿ではありますが、クリスティーナを最もよく表している姿を「肖像画」として描いたのではないかと。

学生の皆様(一部先生も)、ご苦労様でした。
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鑑賞会が終わって、帰りがけのエレベーターの中で、同じくボランティアとして参加された方が、「(この様な時間を過ごせて)楽しかったですね」と言われていました。
美術鑑賞には、ある程度のリテラシーが必要ですが、楽しくなければ観る意味はありませんね。

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2014年ふり返り(1)杉浦光

杉浦光《動と静》YEBISU ART LABO (2014.12/4-12/27)

2014年にいろんな展示を拝見しましたが、その中で心に残りながらもまだブログにUpできていないものをあれこれ書いてみます。

12/14名古屋伏見にあるYEBISU ART LABOの杉浦光個展《動と静》(2014.12/4-12/27)に行きました。作品は7点。どれも全体に青っぽい色使いで、少し離れたところから見ると、泡が水面に広がっている様に見えます。大きな泡のまわりに小さな泡がまとわり付いている様で、特に何かの形を表しているわけでもなく、ただ泡どうしが集合体を作っている。その泡の輪郭が滲んでいる様に見えるので、どうなっているかと近づいてよく見ると、泡の形は、小さな点の並びで構成されていました。
(こちらの作品、離れて見ると水面上に泡が広がる感じ)
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(近づいてよく見ると、泡の周りの点々が見えてきます)
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(もうひとつの作品も、離れてみますと)
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(これも近くで見ると点々・・・)
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絵画全体に(離れて見れば)、水面に泡の塊が互いに纏わりながら無限に広がっているようで、ジャクソン・ポロックのオールオーバーな絵画を思い出しました。ポロックは、床に置いたカンバスの上(空中)から塗料を滴らせる「ドリッピング」や線を描く「ポーリング」と言った手法で描きました。杉浦さんの泡の形状も、「ドリッピング」の手法を(下書きで?)使って描いたのでしょうか。泡のまわりを囲む無数の小さな点は勿論、手でひとつひとつ描いた、と言うか筆で塗料を置いていったのでしょうね。
ポロックは、具体的な何かを描いたわけではないですが、時折、木々に生い茂る枝や地面に生えた草の重なりに似ていると言われる事があります(自然の造形を参考にしたかのように)。ただ、無造作に空中から塗料をまき散らしているわけでなく、(当然ではありますが)構図を考えながらドリッピング&ポーリングしたのでしょう。
杉浦さんも、(水面に浮かぶ泡の塊を思い浮かべたかどうかはわかりませんが)何らかのイメージをもって泡部分をドリッピングしたのかもしれません。

展示スペースには、杉浦さんの説明テキストが置いてありました。
自分のスタイル構築に参考としたのは、オプ・アートそしてミニマル・アートなのだそうです。オプ・アートからは、視覚的な動きを、ミニマル・アートからは、形態や色彩を最小限にする事を自分の作品に活かそうとしたのだと。
この考えを元に実際に作品制作をするにあたって、3つのルールを定めたそうです。
ルール1)「色を単色にする」
ルール2)「画面全体に幾何学模様をつくる」(オールオーバー)
ルール3)「模様の周囲に点描し規則的な構造にする」。
絵画制作に、「ルール」を持ち込むのは、奇妙な考えだと思う人も多いでしょうが、杉浦さんにとって、「ルール」は、絵作りの上では、ドローイングや下書き同様にアイディア出しと同じだと考えているそうです。
と、ここまで書いてみて、「フラクタル」を思い出しました。シンプルなルールを繰り返し使用し、その結果は複雑な形状に至る、自然の形状はその様に出来ている事が良くあるそうです。杉浦さんの作品作りに見られる「シンプルなルール」と結果としての「複雑な形状」が、それとよく似ているとの印象を受けました。
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ゆでたまご

Author:ゆでたまご
鑑賞者の目で現代アートを探求

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