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飯山 由貴 《Temporary home,Final home》

飯山 由貴
愛知県美術館 APMoA Project ARCH vol.16
《Temporary home,Final home》 2015.8/7-10/4

 飯山さんの作品展示室前の壁に、《自分の人生を生きる》という文字のネオン管の作品が展示されていた。
[解説]: 「本当に、自分の(自分だけの)人生を生きることってできるのだろうか?」
 展示室には、5点の映像作品を展示していたが、その中でも《あなたの本当の家を探しにいく》と《海の観音さまに会いにいく》に興味を惹かれた。
 8/9には、愛知県美術館でアーティスト・トークがあり、作品制作への取組みや考え方等を聞くことができた。作品の中には、飯山さんの家族の方々が出てくる。妹さんは、精神の病を患っており、時折、幻聴や幻覚の症状が表われるらしい。
<飯山 由貴 さん>
IMG_0888_convert_20150822204821.jpg
(※参考:解説資料&飯山さんHP&トーク)

《あなたの本当の家を探しにいく》 
 ある秋の夜、妹さんが「この家はわたしの本当の家じゃない」と泣き出し、「本当の家」を探しにパジャマ姿で外に出ようとした。今日は雨だからとか、外は危ないからと言って引き止めたが、飯山さん自身、このまま探しに行ってもいいのじゃないか、とも思った。翌月の夜、二人は、「本当の家」を探しに出かける事にした。飯山さんと妹さんは、ニット帽の上に小型のビデオカメラを装着し、夜の街へと出て行く。二人が撮影した街の風景は、歩きながらの会話と共に、スクリーン上に映し出される。

c「あ、月だ!すごい」
y「ぜんぜん意識してなかったけどきれいなときにあたったね」
c「さいきん月見てないからさ」
y「満月?これ」
c「ちょっと欠けてるのかな?」
・・・・・・
y「病気、そういうなんかさ、音が聞こえたり目に見えるようになったのはいつからだっけ?」
c「それはやっぱり、中学校、三年くらいかな」
y「学校にあんまり行けなくなったのはなんでだったの?」
c「いろいろあったけど、うーん、その場の空気についていけない、とか」
c「たのしくなくて おもしろくなくて ただ時間がだらだら流れていっちゃって わたしなにやってるんだろうっていう」
・・・・・・
y「ねえ、なんかすごい、イルミネーションがついている家があるけど」
c「あ-もう、クリスマスですね・・・」
y「あそことかは、本当の家っぽい?」
c「うーん、そう なんかこういう家ってあこがれていた」
本当の家探しumblr_inline_mxatpfzHDb1s36v6a_convert_20150822205807
・・・・・・・・
y「よくほら、たまにあなたどっか行っちゃうじゃん 夜に
 家飛び出しちゃうじゃん あれはどこ行くの?」
c「ここまではこなかったけど 来たかったんだけどここまで 靴下でいったから」
y「寒かった?」
c「寒かった 寒くてもどってきた」
y「あっははは 寒くてもどってきたんだ よかったよかった」
・・・・・・
y「なんで、あのとき、本当の家はここじゃない、って思ったの? いつも思ってるの?」
c「いつもは思ってない」
y「わたしとお母さんがケンカしたから?ケンカっていうか、ぐちゃぐちゃ汚い言葉を言ってたから?」
c「それはあるかもしんない」
・・・・・・
y「その なんで精神科の病院に、行くことになったの?」
c「症状が、どの科に行っても、異常なし、って言われて、それでも、
 いろんな、音とか声とかみえたりとか聞こえたりとか するから」
c「自分、病院、嫌だったけど、いろんな科まわされるの、嫌だったけど
 この症状、この今の状態をね、知りたいから、どうなっているかを
 どんな、病気なのか、病気じゃやないのかっていうことを 知りたいから、
 病院紹介されたのを 精神的なことからくるんじゃないですか、
 っていわれて、心からくる」
y「最初心身症っていわれてなかったっけ?」
c「心身症 そう 身体表現性障害っていわれちゃったんだけど」
y「あれ、それは何歳くらい?」
c「それは、6年生のとき」
・・・・・・
y「なんかあんま日本ぽくない家がいいの?」
c「日本ぽくない家がいいの、なんか北欧にありそうな」
y「いやだからね さっきから、あなたの その ほんとうの家って、
 ムーミンハウスなんじゃないかなって 思って」
c「あっはっはっは それは・・もう、ぶっちゃけそうだけど」
y「ムーミンハウスがあなたの家なの?」
c「うん・・・」
y「あ、そう・・・ぶっちゃけられちゃった」
c「でも わたしムーミンじゃないし 人間だし」
y「じゃあムーミンになればいいんじゃん?」
c「ムーミンになっていいの? ふふふ」
y「(ムーミンは)妖精でしょ?生きながらにして妖精になればいいんだよ きっと
 で、そうだ、そうだよ、自分がすんでいるところがやっぱり本当の家なんだよ」
c「うん、あれがムーミンハウスなのかな」
y「うん、うちがムーミンハウスなんだよ あなたがムーミンだったら」
c「うちの家って、青い屋根じゃん?」
y「うん、青い」
c「だから、ムーミンハウスに近いのかなって」
※参考:ムーミンハウス  ムーミンハウス
・・・・・・・
c「青い屋根が見えると、あ、うちだって なんか なんか うん
 お母さん、家族が待っているんだなって」
y「そんなこと思うの?」
c「うん なに どうしたの?」
y「いや、そんなこと言うから 思ってもみなかった」
・・・・・・
y「どうするの?ここ家だよ」
c「家だよ 帰ります」
y「帰るの?」
c「ここがわたしの家だよ」
y「それでいいの?」
c「うん」
y「わかった」

***************************

 この作品は、飯山さんと妹さんが、頭にビデオカメラを取付けて、夜の街中を徘徊しながら撮影したふたつの(二人の)映像を重ねて映したものです。ひとつの映像だけなら、どこにでもある普通の夜の街の退屈なシーンだったと思います。でも、重ねる事で、似たような風景だけど少しずれていて、揺れ動きながら互いに絡み合い、時折、隣を歩くお互いの姿も写っていたりして、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
 飯山さんは、ふたりで「本当の家を探しに」行こうと言って、現実から乖離した妹さんの幻覚の世界に、自ら分け入って行きました。揺れ動く映像は、中々見つからない本当の家を探しながら、夜の街を彷徨うふたりの心象風景に見えます。歩きながらの飯山さんの語り掛けは、妹さんの暗く閉ざされた心の扉を少しづつ開いていく作業です。外から思い切り扉を叩いたり、大声で呼びかけるのでなく、ほんの少し開いた扉の隙間から囁きかける感じです。それで精神の病が治るわけでは無いですが、そのままでもムーミンとなって、自宅をムーミンハウスとすれば、現実の世界での居場所を確保できるわけです。
 飯山さんの寄り添う様な語り掛けに、何だかほっとします。

※参考:ムーミン一家(ムーミントロール、ムーミンパパ、ムーミンママ)
moomintroll-180x180_convert_20150822205436.pngmoominpappa-180x180_convert_20150822205540.pngmoominmamma-180x180_convert_20150822205554.png

***************************

《海の観音さまに会いにいく》
(※解説資料)『「本当の家」を探しに行った後、あれって何だったのかな、と妹と2人で話をして整理しました。すると、自分は妖精の姿になって、ムーミンたちと一緒に難破船を見に行ったり、海の観音さまにお祈りをしにいっている、という事を教えてくれました。それでは、こんどは家族で一緒に再現をしてみよう、と誘ったら、彼女はやる気になってくれたので、やってみることになりました。』
 飯山さん一家は、ムーミンの着ぐるみを着て、観音様にお参りします。着ぐるみや小道具、機材などは、飯山さんが準備し、撮影場所や観音様にお参りする時の行動や言葉は、妹さんが考えました。撮影中の行動は、妹さんの指示に従います。飯山さんはムーミン(トロール)、お父さんはムーミンパパ、お母さんはムーミンママ。妹さんは、自身がデザインした「妖精」(とがった鼻、口の無い顔、背中にアゲハ様の羽根)。
 飯山一家は、ムーミンファミリーになり、海の観音様にお祈りに行きます。
飯山由貴ムーミン一家と観音様1
飯山由貴ムーミン一家と観音様2

「ではみなさん 行きますよ」
-はーい
「さかなをもってるんです この観音さまは 海を守ってるんです」
-じゃあ、ぼくたちも守ってくれるのかな
(観音様の前で、みんなで頭を下げる。)
「では、私がお願いごとを言いますので、続けてこう言って下さい。」
「ここ おだわら はこね ムーミン谷」
-ここ おだわら はこね ムーミン谷
「ともに」
-ともに
「平和と 幸せを」
-平和と 幸せを
「守りつづけるよう」
-守りつづけるよう
「お願いいたします」
-お願いいたします

「みなさん (お賽銭を)投げおわりましたか」
-あ、まだまだまだ
「いいですね ではもういちど、観音さまに一礼しましょう」
 (一礼します)
「ゆっくり頭をおこしてください」

◇海の観音様に会いに行った翌日、現実と幻聴・幻覚がみえる状態のあいだにいるような時の会話
c「フローレンとムーミンがもうすぐ結婚するの
 そしたらわたし、ムーミン谷から離れなきゃいけないの」
y「妖精さんが離れなきゃいけないの?」
c「うん」
y「なんで?」
c「冬が来ると、妖精さんは春の国に行くの
 ムーミンとフローレンは、冬のまえに結婚して、冬のあいだ眠って、また春が来るのを待つの
 スナフキンも、春のほうに 春のほうに旅立つから、途中までは一緒
 でもわたしはちがう」
y「みんなそれぞれ別のところに行くんだ」
・・・・・・
y「木苺(きいちご)ジュースが来ましたよ」
c「木苺ジュースかんぱい
 ムーミンママの今年最後の木苺ジュースだ」
c「春になったらここも、ムーミンママにも会えるし、パパにも会えるし、ムーミンにもあえるし、
 フローレンにも会えるし、フローレンとムーミンのあいだにできた子にも会えるし
 ムーミンとフローレンのあいだにできる子の名前、ここが春になるまでに、考えとかなきゃ
 妖精は 結婚できないから」
y「妖精さんは結婚できるんじゃないの 妖精さんは妖精さん同士で結婚できるよ」
c「わたしはできないの 結婚できない 妖精の種類なの」
y「そうなんだ」
c「幸せになってはいけないの」
y「そんなことないよ、妖精さんは、幸せになれるよ 妖精さんは幸せだと思うよ
 妖精さんはいま、自分が不幸だと思うの?」
c「うん」
y「どうして?」
妹映像convert_20150822205853
c「妖精さんは、人や動物とか 生き物に、幸せを与えるものなの」
y「いろんな人に幸せを与える」
c「与えて、与えてね、私の種族は、そういう、幸せを与えて、不幸になってもいいくらい、なの」
y「妖精さんは自分が不幸とか幸せとかは関係なくて、その、いろんな人に幸せをもたらすために
 不幸になるの?」
c「幸せをもたらして、いつのまにか不幸になってるの」
y「妖精さんが幸せで、自分の幸せを人にわけるんじゃだめなの」
c「わたしの種族はそうじゃないの」
y「でもその種族のなかにもさ、突然変異のひとはでてくるかもしれないじゃない
 もしかしたら妖精さんは、自分が幸せで、その幸せをすこしずつ人にわけられる種族、突然変異のひとかもしれないよ」
c「そうだといいんだけど」
y「ぼくはそうだと思うけど」
c「そうだといいね」

c「やっぱりムーミンママの作った木苺ジュースは、おいしい」
y「おいしい? ぼくもこれすき」

***************************

 《海の観音さまに会いにいく》では、妖精となって観音様にお祈りする時の妹さんの楽しそうな雰囲気に対し、翌日の会話で見せる、沈鬱な表情との落差が気にかかる。ムーミンの世界にいると落ち着いて幸せな感じでいられるが、現実の世界に引き戻された途端苦しみが始まるのだろうか。
 幻覚を見る事が悪い事なのだろうか、との思いがある。飯山さんは、妹さんの幻覚の世界に寄り添い、一緒に現実の世界から少しはみ出しながら、落ち着き場所を探している。

***************************

今回の映像インスタレーションの配置は、展示室内部を柵のようなもので仕切っています。
※検討案の写真
IMG_0906_convert_20150822205109.jpg

※柵越しに映像を見ると
IMG_0884_convert_20150822204746.jpg
IMG_0891_convert_20150822204857.jpg

 飯山さんは、作品制作の前にそれに関連したリサーチを行います。精神医療に関しても、かなり詳細な調査をしたそうです。展示室内には、それら調査資料も閲覧出来る様になっていました。

 昔は、「精神病者監護法」なるものがあって、精神病者を自宅に留め置く「私宅監置(したくかんち)」と言われる制度があったそうです。座敷牢みたいなものでしょうか。1950年に法律改正で、その制度は禁止されましたが、その後もしばらく不法な監置が行われていたそうです。
※私宅監置例私宅監置例convert_20150822205645

 今回は、それをヒントにして、格子の柵の様なもので展示室内を構成しました。

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渡辺 英司 新作展「急げ、ゆっくり」

渡辺 英司 新作展「急げ、ゆっくり」
(ケンジタキギャラリー名古屋) 2015.6/13-7/11

 ギャラリーの入り口のドアを開けると、一本の木の柱、《心柱》が目に入る。
IMG_0325_convert_20150814214217.jpg
 「心柱」と言えば、五重の塔の中心にある柱を思い起こす。それは地震対策の制振装置らしいけど、こちらはそうではないらしい。柱の周りを回って、その断面形状を見ると、奇妙な凸凹になっているのが判る。
IMG_0349_convert_20150814214420.jpg IMG_0346_convert_20150814214352.jpg
 ハート型だ。合板を同じサイズのハート型にカットして、それを百枚以上も重ね、一本の柱に仕立てている。だから、《“心”柱》。

 奥のコーナーには、黄色に塗られた半円(板)や大小の球が並べてある。
 《太陽系》
IMG_0357_convert_20150814214622.jpg
 大きな半円は、太陽。次に大きい球が、木星。円盤を伴うのが、土星。続く中くらいの二つが、天王星と海王星。それ以外は、大きさで判別するのは難しいが、青色に着色してあるものが地球だ。展覧会の最終日の為、来廊していた作家の渡辺さんに教えて頂いた。

 隣の壁には、黒い小山の様な絵が掛っている。
 《昼夜》
IMG_0358_convert_20150814214702.jpg
 「The Day & Night Map」なるものがあって、世界地図上に、昼と夜を表示します。ネット上で検索するとこんな感じのものが見つかります。
TheDayNightMap_convert_20150814225040.jpg
夏至に近ければ北極(上の部分)は白夜となって明るくなり、夜は、絵の様に、下に開いた小山の様な形になります。球体表面の光が当たる部分と影の部分を、平面上に表現するとこの様になるわけですね。

 右の壁には、何やら奇妙な恰好をした掌の絵が並びます。何かを掴む様な恰好に見えます。
  《球種》
IMG_0353_convert_20150814214447.jpg
 渡辺さんの説明では、野球のピッチャーが、様々な球種を投げる時のボールの握り方だそうです。どの手がどんな球種なのか、素人にはわかりませんので、聞いてみました。「あ、これはね」と言って絵を一枚、壁から外し、「これはパームボール」。絵の裏側に球種が書いてありました。(下図中段の中央の手)
IMG_0354_convert_20150814225234.jpg
IMG_0355_convert_20150814214535.jpg
IMG_0356_convert_20150814214557.jpg

2階の展示スペースに、《鶴》というタイトルの絵があった。
小型のキャンバスの上に、白い絵具を塗り、対角線やその周りに絵具の盛上げた様な直線を見せる。この形状の意味するところが不明。
IMG_0372_convert_20150814214823.jpg
 反対側の壁には、《三色の鶴》。正方形の色紙に、先程のキャンバスの絵と同じ直線が描かれている。
IMG_0376_convert_20150814214908.jpg
 多分、この直線は、折り紙の「鶴」を開いて、元の1枚の紙に戻した時の”折り目”なのだろう。(確認してないけど、多分そう)

太めの角材の上に、ペットボトルの蓋をのせた《フルボトル》。蓋を載せるだけで、角材がボトルに見えて来る。
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***************************

 渡辺さんと言えば、植物図鑑から植物の写真を切取り、床一面にそれらを植えて「図鑑庭園」を作ったり、昆虫図鑑から蝶の写真を切取って壁に貼りつける等の作品が、真っ先に思い浮かぶ。しかし、渡辺さんの作品作りに興味を惹かれるのは、今回の様な、自由な発想による様々な試みを見せてくれるところだ。
「急げ、ゆっくり」 マイペースで行こう、と言う事か。
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ゆでたまご

Author:ゆでたまご
鑑賞者の目で現代アートを探求

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