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榊原澄人 永遠の変身譚

榊原澄人 永遠の変身譚(メタモルフォーシス)
清須市はるひ美術館  2016年10月4日(火)~12月11日(日)

国内外で、今、注目のアニメーション作家である榊原澄人さん。初期作品(イギリス ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修了作品)の《神谷通信》(2004)から、《浮楼》(2005)、《淡い水の中》(2007)、《É in Motion No.2》(2013)、《Solitarium》(2015)、そして最新作(郷里北海道で撮影)の実写映画《Rapollo》(2016)まで、これら代表作をまとめて紹介した、美術館では初めての個展だそうです。
 タイトルの『永遠の変身譚』は、古代ローマの詩人オウィディウスの「変身物語」(メタモルフォーシス)由来のものです。確かに作品の中では、キャラクターの変身場面が頻繁に見られます。
<上映作品例>
《É in Motion エ・イン・モーションNo.2》(2013)  榊原氏のサイト
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《Solitarium》(2015)
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気になったのは、初期のものですが、《神谷通信》(2004)。
小学生の少女が、亡くなったお母さんに手紙を送る話です。
小学校での出来事、同じく小学生の弟の日常、僧侶の父親の毎日のお勤め、老犬タロの様子等を手紙に綴った内容が、ナレーションとして流れます。
淡々とした日常の記述の隙間から、突然、愛する母を失った悲しみを受止められずにいる少女の姿が垣間見える様で、胸に染みてきます。

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拝啓、お母さんへ
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お母さんお元気ですか?
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今年の夏も暑いけど、紀子は何とか元気にやってます。
いつもお母さんに会いに行こうと思うんだけど、宗吉(シューキチ)が友達と一緒についてくるってうるさいし、これじゃ当分は無理みたい。

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学校はもうすぐ夏休み。みんなそれぞれ忙しい。
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近頃女子の流行は、援助交際。一日3万。
衣装はきっちり、メイク無しでは歩けません。
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タルペコ(担任教師)は、生徒との不倫がばれて、家庭崩壊の危機。
浮世は正に地獄の沙汰。
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でももうひとりの浮世離れは、元気いっぱいにしています。
宗吉は最近、新しいお面に取り換えて、心機一転。どうやら今度は、狐になるらしい。
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新しい友達も出来た様で、えーっと、名前、ハービーって言ったかな。
日本人じゃないみたい。けど、宗吉も知らないんだって。
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宗吉曰く、人の世は至極やっかい。
虚仮の一念(こけのいちねん)。  時に物事は、知らぬが仏。


家のタロも今年で17歳。年功序列の世の中では、ヘビー級。
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威厳漂う柴犬のそろそろ彼岸は近いと見た。  南無阿弥陀仏。
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「ただいま」
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お父さんは、相変わらず。  年功序列の世の中じゃ、43歳生臭坊主はミドル級。
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日々のお勤めはきっちりやっているようだけど、お彼岸に近づいているかは疑問。
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まだまだ甘い。


お母さんが逝って一年が経つけど、まああれでもお父さんなりに頑張っている様だし。
どうやらこんな感じで時は過ぎていくみたいだけど、何だかんだ言って、みんな元気にやってます。
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お母さんもお元気で。
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「宗吉!手紙」
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PS.
お母さん、お盆には、帰ってくるんでしょ。
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私がそちらに行けたらいいんだけど・・・


『私がそちらに行けたらいいんだけど、お迎えはまだ来そうにないし。
やっぱりお盆まで待たなきゃだめみたい。お盆まであと3週間。
お母さんが帰ってくるのを、みんな楽しみに待っています』
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「私がそちらに行けたらいいんだけど・・・」
神谷通信は、大きな川を隔てた向こう側、彼岸に渡った母親への、此岸に住む娘からの手紙。
手紙を届けるのは、狐面を被った弟の役割。墓石の前に何通もの手紙。どうやって川の向こうに届けるのか。河童と友達になったのもうなづける。
手紙はちゃんとお母さんに届いたようだ。手紙を読む声に、子供を慈しむ気持ちが滲む。
きっとお盆には、お母さんのぬくもりを感じる事だろう。


◆「虚仮の一念」(こけのいちねん):
愚かな者が一つの事だけに心をかたむけ、やり遂げようとすること。
◆「彼岸」(ひがん):
仏道に精進して煩悩を脱し、涅槃(ねはん)に達した境地。
◆「此岸(しがん)と彼岸(ひがん)」:
仏教では、人の住む世界を「此岸」(しがん)と呼ぶ。
仏の世界は大きな川を隔てた向こう側にあるとされ、「彼岸」(ひがん)と呼ばれる。
人は死後、彼岸へ行くと考えられ、そこでは、煩悩に煩わされることなく永遠に平穏無事に暮らせると考えられている。

(参考)ニコ動に《神谷通信》がアップされている。
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