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高橋コレクション(名市美で女子会)その1

4月27日、名古屋市美術館 高橋コレクションMindfulness! に出展している4人の女性作家のトークがありました。進行役の美術館学芸員の笠木日南子さんを加えた5人の女性のトークは、まことに賑やかで楽しかった。その雰囲気を伝える為に、録音の文字起こしを中心にお伝えします。トークの時間は、1時間40分程でしたので、結果、文章もかなり長くなりました。一度に掲載するのは(読むのも)大変なので、分けてUpします。それでは、「その1」です。

1階の入り口(後ろに草間彌生さんの作品)にて。
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向かって左端に、進行役の名古屋市美術館・学芸員の笠木日南子さん。笠木さんが、本日の4名の女性アーティストを紹介しています。笠木さんの隣の2人は、名古屋在住の作家、名知聡子さんと和田典子さん。
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右手2人は、東京在住、ウーパールーパーのナポレオンさん(松井えり菜)と近藤亜樹さん。
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4名の方の作品展示は、2階会場なので、2階へ移動。笠木さんが、最初のトークとして松井さんを紹介。ウーパールーパーの被り物を脱いで、『松井えり菜』さんが現われる。
松井えり菜)ウーパールーパーの中身の松井えり菜です。これかぶっていると前が見えないので、こんなに人がいるとは思いませんでした。今、驚いています。
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笠木)今日は4人の方にお越しいただいていますので、先ずはそれぞれの作家さんから、自分の作品についてお話いただいて、それから、他の作家の方にもお話(質問など)をして頂こうと思っています。
松井)ハイわかりました。こちらの作品は、多摩美術大学の卒業制作のもので「食物連鎖StarWars !」(2008)という作品です。
IMG_4699(400.jpg<図録から>

私の作品は日常の面白さから着想を得て制作する事が多くて、この作品は、食物連鎖をテーマにしてます。おっきいものから小さいものへ、通常紡がれる食物連鎖という事象が、人間の登場によって大きく変わってしまったのではないかという事を、絵を通して伝えていきたいと思って作った作品です。これは鯱(しゃちほこ)ですね。2008年当時から名古屋で展示する事を見越して作りました。これは作りました(手に持った段ボールに描いた鯱)。
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これはこの様に、(笠木さんが絵の上の方に突き出ている先に鯱が付いた針を動かすと)耳を澄ましていただくと、スターウォーズのテーマがオルゴールで流れます。食物連鎖の、戦いなので、スターウォーズ、規模大きくやってみました。こういった作品を作っています。
(笠「これは?(大きな顔を指して)」) 自画像です。 (笠「松井さんの作品、大きなほくろが」) 私が自画像をメインにしたのは、人間を通した世界、ま自分の自画像と言うよりは、ひとつの物体を通して見てもらいたいと思い、自分の顔をクローズアップして描いています。
笠木)いつも巨大な松井さんの顔が出てくるんですけれども、こんなに可愛らしい方だとは。
松井)嬉しいです。
笠木)次に向こうの作品を。
松井)こちらの作品は、東京芸術大学の大学院修了制作で、襖絵です。屏風みたいになって。
IMG_4693(400.jpg<図録から>

子供の頃に見たある襖が、を大人になってから見た時の方が、感動が大きかったんです。何で感動が大きかったかというと、大人になったからの方が、絵のバックグラウンド、絵師が有名だとかを知っていたり、子供の頃より勉強していたので、感動があったんです。子供の時もしその知識があって、襖絵を見たら絵がもっと大きく感じたと思う。自分が今よりちいさいので。その時見れたらいいなと思って、この襖絵は、私が見た5才の時より(私が)1.5倍の大きさになっているんです。なので、1.5倍の大きさで襖絵を書きました。こういう感じの作品です。 ハハハハなんか緊張しちゃって。
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笠木)今私たちが見て、松井さんが5才の時見たくらいのどーっんとした大きいのを再現したかったと・・。
松井)そう、そうです。最初からそう言って下さいヨ。
笠木)このサンショウウオは、(松「ウーパールーパーです」)あ、ウーパールーパーは、裏の方にも描かれているので、あとで見て下さい。
謎に思っていることをひとつ。今日も、ウーパールーパーのナポレオンさんが友情出演してくれてますが、作品の中にもウーパールーパーさんが出て来るんですけれども、ウーパールーパーさんは松井さんにとってどんな感じですか?
松井)ウーパールーパーも、いちおう私は自画像として描いております。なぜかと言いますと、子供の頃よくウーパールーパーに似ていると言われてたので、そういう自分を反映したものだと。ハイ描いています。
笠木)見ている方も、ウーパールーパーが好きなのか、ご自身を投影しているのかと・・。
松井)あとあの、飼ってます。
笠木)それでは、今日は4人の作家さんがいらっしゃるので、別の作家さんから見た松井えり菜の作品についてとか質問とかをお聞きしていきたいと思いますが、如何でしょうか。では、名知さんから。
松井)名知さん、お手柔らかに。
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名知聡子)単純な質問で申し訳ないですが、大体一枚どれくらいの期間かけるんですか。
松井)私は、割と時間が掛りまして、3ヶ月から5ヶ月ぐらいです。
(4人「えーっ!」)ただ、同時に何枚も描くので。常にフレッシュな状態で描きたいので。ずっと書いてると、画家だとわかると思うんですが、だんだんマンネリ化してくるので、飽きてきたなと思ったら次の絵、そして飽きてきたら次の絵・・・、と言う感じで、回していくので、5ヶ月間で3枚くらいかなーって言う感じ。
名知)じゃ、次の絵に行く時は、前のがまだここにあってみたいな。
松井)で飽きて、ふとした日常の面白さ、こうゆう話していて、あ、このネタは使えるなと言うのも、エスキース(※スケッチ、下絵)からどんどんかけ離れていっちゃうんですけど、どんどん入れちゃって。なので私の絵は、ギャラリーの人に「困る」って言われて、計画しているのと全然違うという様な事になってしまうので。でも、大体の筋は通しているんですけど。ハイ。-で、次の・・・ ヤッホー。
近藤亜樹)ヤッホー
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松井)あ、亜樹ちゃんと私は、アトリエが一緒なんです。
近藤)なんで、ちょっとどうしようかな。あの、スターウォーズと、こっちは何だっけ、テーマは。
松井)“目から鱗でめでたい“という・・・。
近藤)「めでたい」になんかこう、んーピックアップしてる、注目の・・、どうしてそこにピックアップしたか。
松井)え! 
近藤)どうしてそれを選んだのか。
松井)「食物連鎖」?
近藤)「食物連鎖」だけど、毎回ちがうでしょ。スターウォーズ、うー、鯛。
松井)その質問、難しくネ!
近藤)そうですけどヘヘヘ。みんな聞いてるしねへへ。
松井)もう少し練り込む時間ほしかったな。あーでも、一応子供の頃見た感動を大人になってもう一度追体験したいってゆう、あのー思いがあってこの作品を作りました。
近藤)そっか、じゃあ、そこの現地には行ったりするんですか?
松井)勿論、私は見て、やっぱり見て感じなければ、こー中々、筆も進まないので、この前も小笠原諸島に行った時に、見た風景が、小笠原諸島って海洋島なんで、ガラパゴス諸島みたいな。原生の木がすごく低いんですよ。その様子がスイスの山々に登った時の標高の高い山にすごく似ていて、その瞬間すごくダブった時の感動を絵にしたものとか、描いたり。そういう、何か自分で体感したものの方が、描いた時に、人に訴える力が強いのではないかなーっと思います。例えばですけど、私が、戦争画を描くぞってかいても、なんとなく薄っぺらいものになってしまうんですけれども。やっぱり自分で実体験したもの描いたら、絵って感情そのものも練り込んで描いていくものなので、見る人に伝える力がもっと大きいんじゃないか、と思って描いてます。
ここちゃんと説明できた?(パチパチパチ・・拍手) すいません乗るのに時間かかっちゃって。
和田典子)私あの、質問を考えてきたんですけど。話のなかで答えが出てしまって。(ハハハハ)
私の予想だと、すごく下書きとか構図とか描くモチーフとかを、かなりきっちり決めて、計画的に描いているんじゃないかなと予想していて、下書きとかドローイングとかを沢山しますかと言う事を聞きたいと思ってたんですけど、わりと途中からどんどん出て来るっていう事だったので・・・。
松井)そうですね、私、下書きでいいものが出来てしまうと、それ以上に良いものが描けなくなってしまう、で、下書きは大体ラフにして、そしてこう、どんどんキャンバスで描き始めて、途中で同じく話してる時に、何か亀、インドとかの、あの、あ、今その、私最近結婚しまして、ひゅー。(パチパチパチパチ・・・)あのーそれで私、松井えり菜でなくて、亀山えり菜なんですけれども、ホホホホ。で、「ミズ・タートルマウンテンの憂鬱」っていう絵を今描いていて、へへへ、結婚した事によって、パスポートも変えないといけないし、○○マーク(サインの事?)も変えないといけないし、何で女の人ってこんなに大変なのって、思った時の感情を絵に描いています。私が地球になっていて亀の岩に押し潰されていて、歯ぎしりしているという絵なんですけれども。だからその絵を描いている時、インドの神話で亀の上に象がいて地球を支えているのが、そんな世界論の様な事を聞いた時、あ、これは、入れるしかないな、みたいな。今、何か無理やり入れないといけないな、みたいな、思っていて、ま、あんまり支度してないです。
笠木)ありがとうございました。作家さんならではの視点からの質問が、面白いと思ったんですけれども。
会場からも質問受けましょうか。
質問1)平面以外、立体もの作るのはどういう時?
松井)私は元来手を動かす事が好きで絵を描き始めているので、あのさっきも触れたんですが、常にフレッシュな感覚で絵を描いていたいというのがあるので、絵を描いている合間に、小さい立体物とかは作ったりします。だから、粘土こねたりするの好きなので、その、絵と連作のものもあるんです。ムーンライト・パーティって言う、ウーパールーパーが積み重なっている絵を描いた時に、ウーパールーパーの月見団子みたいなオブジェを作った事もありますし、までもあの原色の・・・と比べると荒れた作品なんですけれども、それなりに愛着があって、立体を作るというよりは、絵を描く感覚で、一緒にその、副産物ですね。(というのを)作ってます。
質問2)何でブースカやねん。
松井)「ブースカやねん!」ですか。 
IMG_4696(300.jpg<図録から>

私、ウーパールーパーが好きなんですけれども、家で飼っているウーパールーパーにブースカが似ていたので、ちょっとアイコン的に。ただ、著作権的に大丈夫かなという事が心配になって来ているんですが。あのロビンっていう馬がいるんです。あのロバみたいな子供が乗るような、乗用ロビンっておもちゃがあるんですけれども、あれに関しては版権を取っているので、あれは大丈夫。版権というか、その、えっと、そこの会社の方に描いていいという許可を頂いています。
笠木)そうですね。著作権の問題は大切ですね。
松井)そこのおもちゃ会社の人からも、「前から気になっていた」と言われました。ハハハハ
笠木)他に質問なければ、他に小道具を用意して・・・、実はこれ松井さんのアトリエの、作品が生まれる現場の写真をご用意頂いたんですけれども。実は、松井さんと近藤さんは、同じアトリエで。お部屋は別ですが、同じ建物の中にアトリエをお持ちと言う事で。
それと、名知さんと和田さんですけれども、今は別々のアトリエで活動されているんですけれども、昔、ドットと言うアーティストランのスペースとアトリエが限られたところで、一緒の場所で生活されていたと言う繋がりがある4人の作家の方です。こういった作品が生まれる現場と言うのは、なかなか見る機会がないので、面白いかなと思って。
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松井)ありがとうございます、印刷。こんなにいい印刷にして頂いて、私のアトリエが喜んでいると思います。こちらの絵が先ほどお話させていただいた小笠原の絵なんです。こんな風に私のアトリエは、全ての作家さんの作品と頭の中って、アトリエに象徴されている様な気がして。私以外の(3人の)方のアトリエも出て来る時に、「アーっ、本人と被るわー」みたいな所が出て来ると思うので、楽しんでいただけるのではないかなと思います。私の頭はわりとぐちゃぐちゃなので、わりとぐちゃぐちゃ。で、これはきれいな方ね。
近藤)うん、すごくきれい。
松井)ア、ちょっと待って。デヘヘヘヘ。
近藤)松ちゃんいつも・・・
松井)ちょっ、ちょっと待って。ゴキブリが出るような汚さではないんですよ。生ごみがある様な汚さではないんですよ。だよね。
近藤)うーん。
松井)また、また。かびたお弁当ぐらいね。
近藤)それっておなじだよね。
松井)それ持って帰るから、最近、有料化したから。持って帰るようにしてます、国分寺市ね。
笠木)こういったのは、絵の材料になるんですか?(床に散らばっているもの)
松井)そうですね、散らばっているのは殆ど絵具だったり、今描いている作品の資料だったり。あとこの後ろにある万国旗は、取材用ですね。多摩美術大学の「先輩のアトリエ」っていう取材があったばかりだったんです。でもま、万国旗は年中ついているよね。
近藤)え、あーそうそう。
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松井)シアタープロダクトっていうお洋服屋さんとコレボレーションのカタログを作った時のまま。2年前のまま。です。(「これがろーでぃー?」)あ、そうです。これがローディーと言う乗り物です。こどもの日によろしくお願いします。大原美術館の展覧会の図録がShopで売ってます。また武蔵野美術大学美術館で、大原美術館が集めた現代美術展をやってますので5/26からなので、東京に行く機会があれば。ムサビはアクセスは大変ですが。私たちのアトリエは近いですが。ありがとうございました。

======<「その2」に続く>========

松井さんの”ウーパールーパー”ヘルメットには、驚いた。いったいこれは、①今回のトークの為にわざわざ作成/②いつも人前ではこの様な姿を見せる/③作品のひとつ、のどれだろうと思ったら、答えはShopにあった。
IMG_4691(200.jpg<大原美術館図録>

図録表紙には、ウーパールーパーの松井さんが写っていて、ページをめくると、ウーパールーパーの頭を中心とした、インスタレーション作品の展示があった。また、松井さんは、これをかぶって各地をたずねる《ドコヘデモイケマス》なるパフォーマンスも行っているんですね。
それにしても、松井さんは、なぜこんなにもウーパールーパーに拘るのだろう。ウーパールーパーは、メキシコ原産の両性類で、サンショウウオの仲間だそうだ。が、カエルの様に「オタマジャクシからカエル」の様な変態はしない。子供の時の形のまま成熟し、大人になる。側頭部の左右3本づつの突起は、鰓(エラ)。サンショウウオは大人になると消えるが、ウーパールーパーはそのまま残っている。生物学では、幼体の特徴を残したまま成熟する事を「幼形成熟(ネオテニー)」と呼ぶ。このあたりが、こだわる理由か。

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