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「これからの写真」展のわいせつ(?)写真

愛知県美術館で「これからの写真」展(8/1-9/28)が開催されている。
開催の主旨をグッと短縮すると・・・
・写真は、デジタル技術により、その環境が激変している。
 特定の技術としての写真は、その輪郭を失いつつある。
・現代アートでは、写真、映像、立体などの複数形態を選択
 しながら創作する者も少なくない。
・本展では、空間、時間、鑑賞者との関係性など様々な視点から
 写真とイメージの様相を探ります。
[出展作家]
 新井卓 加納俊輔 川内倫子 木村友紀 鈴木崇 鷹野隆大
 田代一倫 田村友一郎 畠山直哉

展覧会をご覧になった方は、この「これから」とは、一体「いつのの事?」かと、思ったことでしょう。また、「鑑賞者との関係性」とは? 作品をじっくりと見ながら、そのあたりを考えて・・・と思った矢先、8/13朝、Yahooニュースでこんな記事が。
*****************
<美術館展示写真、愛知県警「わいせつ」 一部覆う>
 愛知県美術館(名古屋市東区)で開催中の「これからの写真」展(同美術館、朝日新聞社主催)で展示されている写真家・鷹野隆大氏の写真が、「わいせつ物の陳列にあたる」として愛知県警が12日、同美術館に対処を求めた。同美術館では13日から作品を半透明の紙で覆うなどして展示することにした。
 問題とされたのは、男性の陰部などが写った作品12点。匿名の通報があり、県警生活安全部保安課が同美術館に「刑法に抵触するから外してください」と対処を求めた。同美術館と鷹野氏は協議し、撤去でなく、展示方法の変更で対応すると決めた。小品群11点は紙をかぶせ、1点の大型パネルは胸より下をシーツ状の紙で覆った。鷹野氏は「人と人が触れあう距離感の繊細さを表しており、暴力的な表現ではない。公権力による介入を隠すのではなく見える形にしたかった」と変更を了承した。
*****************

鷹野さんの展示コーナーは、当初からカーテンで仕切られ、作品のCaptionの隣には注意書きがありました。「性器を含む全身ヌードを撮影した写真もあり、不快感を抱かれる方もあるかもしれません。中学生以下のみでの鑑賞は制限します」等とありました。
IMG_5216_convert_20140813220141.jpg
IMG_5217_convert_20140813220117.jpg

鷹野さんの作品を紹介しますと(図録より)
こんな感じです。制作は、2007、2008年頃が多いですね。
DSC_2990_convert_20140814001009.jpg
DSC_2992_convert_20140814000727.jpg
DSC_2996_convert_20140814000853.jpg
「美しい」と言う写真ではないですね。

そもそも鷹野隆大さんは、第31回(2006年)木村伊兵衛写真賞の受賞者です。この木村伊兵衛写真賞は、「写真界の芥川賞」(朝日新聞主催)と言われるほど権威のある賞です。(※参考:川内倫子さんや畠山直哉さんも他年度の受賞者です。)
受賞理由が興味深くて、

「受賞の理由は、刑法第175条(猥褻物頒布等)に抵触する幾つかのタブーを乗り越えたことと、人間の性の問題を真っ向から見据えたこと。 受賞対象の 『IN MY ROOM』 では、本来のエロスを失った状況下にある現代の我々の性状況を、ドキュメントとして見事に表現している・・・」

受賞当時の話を(ネットで)拾ってみると、

「鷹野さんをよく知る方は、受賞報告を受けた時、「嘘!」と口にしたという。木村伊兵衛写真賞という権威ある賞の審査員の体質を考えれば、受賞は驚き以外の何ものでもなかった。鷹野作品が注目されるのは、男性のヌードを撮り続けている点にあるのだから。」

乱暴な言い方かもしれないが、2006年には、写真界でも男性ヌードが認知されてきたというべきか。
がしかし、2014年の愛知では、まだその様な状況にはなっていないらしい。愛知は、80年代から、現代アートの先進地域等と言われ、その流れで、2010年に、あいちトリエンナーレが始まり、2016年の開催も発表されたばかり。でも、まだまだなのでしょうか。

とにかく、現場を確認しようと、愛知県美術館に再度行ってきました。
大型パネルの1枚には、胸から下が白い布(紙?)で覆われており、その下は見えない状態です。透けて見える様な薄いものではない。
小作品(2L版程度)の何枚かには、トレーシングペーパーが(上部のみ糊付けで)貼り付けられています。ペーパー越しには、ぼんやりと人が2人いる事はわかりますが、男性の性器がどうなっているかは、わかりません。

お客様のひとりが、ペーパーの下をつまんで持ち上げて見ましたら、監視員の方から「お客様!」の声がかかりました。確かに、トレーシングペーパーと言えども作品の一部ですから、触ってはいけないのでしょう。たまたまですが、私は、作品の配置と題名の説明用紙(A3サイズ・ラミネート仕上げ)を持っていたので、下から軽く団扇の様に煽いでみました。薄いトレーシングペーパーは、ふわりと舞い、1秒程、その下の作品を見せてくれました。やはりと言うか、監視員の方からは、「お客様!」の声。私は、明るく「Roger!」と答えました。

それにしても、「これからの写真」とは何かについて話をしたかったのですが、結局、チンチンが見えるのどうのとの下種な議論になってしまったのが残念です。
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