fc2ブログ

ヨコハマトリエンナーレ2014(新港ピア会場(8/12)

8月12日(火)、先日(8/3)は横浜美術館会場に行ったので、この日は、残りを全て回ろうと、余裕をもって9:30には新港ピア前に到着。やはりと言うか、入口もゲートも開いていない。ゲートの格子越しに警備員の方に聞いたら、ゲートは10分前、入口は10:00に開くとの事。馬車道駅から歩いてきたので、暑い。近くにある「JICA資料館」(ここも10時Openだが、ドアが開いたので)の中の椅子に座って涼んだ。(JICAさんありがとうございました)

新港ピア10:00開場時には、入口前に数名の待ち人だった。
入るとすぐロビーには、やなぎみわの作品、演劇「日輪の翼」の舞台(トレーラーの周囲が開いて舞台に変わる)が、展示されている。
IMG_5377_convert_20140815171030.jpg

◇会場にはいくつか映像作品がある。それぞれ個室があり、そこで上映されている。そのひとつ、
《彼女に+彼に》 
レバノンの写真・映像作家、アクラム・ザタリの作品だ。
アクラムザタリ彼女に彼に
<ヨコトリのサイトから>

この作品の部屋の前には、10枚程のアラブ女性と思われる、ちょっと古風なセミ・ヌードの写真が展示されていた。これは何か?と思い説明を読むと、アクラム氏の知人の祖母が残したものだと言う。彼は、その写真の出どころを探り、カイロ(エジプト)の写真館にたどり着く。映像作品は、その写真館の主人ヴァン・レオン氏の話を録画したものとなっている。イスラム圏では、女性が人前で顔を見せる事も難しいと聞く。ましてやヌードである。どの様にして撮ったのか? レオン氏は、女性(友人の祖母)から撮影を依頼してきたと言うのだ。勿論、直接聞いたわけでなく、自分の祖父あたりから聞いたのだろうが、理由はわからない(聞けるはずもないが)。この様な経験をレオン氏自身にもあるのだそうだ。ある日、若い女性が写真館に来て、写真を撮ってくれと言う。了解し、早速撮影に入る。写真を1枚撮る毎に、彼女は衣服を1枚脱いでいく。全部で12枚撮ったが、最後は身に付けているものは無かった。「両親はこの事を知っているのだろうか?」質問にレオン氏は、「さあ、聞かなかったからわからないが、多分、言ってないだろうな・・・」
レオン氏の語りがおもしろい。中東世界の激動の中(勿論、エジプトも例外ではない)、レオン氏の写真館もその中にあり続けた。移り行く様々な出来事やエピソードを飲み込みながら、今もそこにある。覗き込むと、歴史の闇に埋もれた人々の記憶が、突然、顔を見せてくるようだ。

◇映像作品の部屋の前に、何やら黒いゴミの塊の様なものが置いてあった。
《山口-日本海-二位ノ浜、お好み焼き》
殿敷 侃(とのしき ただし)氏の作品。現代社会の不条理に対して批判的なメッセージを発信する作家としてしれている。3才の時、広島で被爆。1995年に肝臓ガンで他界している。
殿敷侃のお好み焼
<ヨコトリのサイトから>

作品は、1987年に山口県の二位ノ浜海岸で作られた。海岸に捨てられた又は漂着した様々な日曜品からなるゴミを集め、穴を掘って、そこで焼き固めたものだ。プラスチック類等が溶けて全体を固めているが、一部はその形状を保ったままくっついている。27年前に展示されたのち、某ギャラリーの庭に放置されていたが、ある美術家に発見され、2012年に再度、展覧会の場に登場する事になった。
今回は、全部で4点(大1小3)の展示。大きなものは、直径120~130cm程の半球形をしている。ポリバケツや空き缶等の日用品が焼き固められた、黒い物体だ。鮮やかな色彩でもなければ、美しい形状でもない。ただの汚いゴミが固まっただけの物なのだが、妙に存在感がある。廃棄物とは、元々私たちの生活の一部だった物なのだから。

◇展示スペースの奥には、大竹伸朗の作品がある。
《網膜屋/記憶濾過小屋》
いかにも大竹伸朗だ。「ニューニュー」(2012)の《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》を連想する。
IMG_5426_convert_20140815165846.jpg
IMG_5427_convert_20140815165924.jpg
小屋の外も内も原色が目立つ雑然とした作り。写真や日用品(凡そゴミの様なものも含め)を小屋の内外にちりばめる、貼り付ける。全体の形は、背表紙に赤いボートを配した、ちょっと開いた本の様な感じ。横には、窓(と言うか穴)があり、部屋の中をのぞき込む事が出来る。部屋の壁には一面に写真が貼り付けられている。誰なのかわからないポートレートやどこかの風景。床にも所狭しと、写真がぶちまけられている。いったいこれは?と思いつつも、しばしじっと見入ってしまう。誰かにとっては、価値(or意味)のあるものなのだろうか。
IMG_5439_convert_20140815170027.jpg
IMG_5441_convert_20140815170056.jpg
反対側の壁面には、およそガラクタとしか思えぬ物がギッシリと並ぶ。一瞬、ゴミ屋敷を連想する。
IMG_5451_convert_20140815170151.jpg
人々の記憶の中から、価値あるものとそうでないものに振り分けた後の残骸なのか。それとも、資料を集めるだけあつめただけのスクラップ・ブックなのか。時折、小屋の横に立つボンベの上から、煙が湧いてくる。
IMG_5435_convert_20140816000204.jpg
IMG_5459_convert_20140815170217.jpg
記憶を濾過し、不要なものを雲散させるのだろうか。でもその様に見えない。記憶のスクラップブックが、忘却の海の底に堆積物として沈んでいく様だ。
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ゆでたまご

Author:ゆでたまご
鑑賞者の目で現代アートを探求

最新記事
訪問者数
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
11 | 2023/12 | 01
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
訪問者数
訪問者数