米山和子祖父江加代子 《つむぐけしきよむこころ》 その2
<その1>から続く
「瓢の間」の襖を隔てた隣に「かげてらす」。
黒のレースカーテンを分けて祖父江さんと中に入りました。
部屋の中央に黒いテーブル、その上に白い巻紙を敷いて、銀色のステンレス盆をのせる。
テーブルを挟んで向かい合うように二人が座る設定です。葵の間の「かしもぐさ」は、ひとりのお茶会を楽しむ部屋でしたが、ここは二人用。

廊下と部屋を隔てる黒いレースカーテンは、部屋を少し薄暗くして秋の夜を演出しています。カーテン生地の上に、黒い線で葉と枝が描かれていますが、襖に描かれた同じ図柄を、祖父江さんが、ご自身で描いたのだそうです。部屋の中の明かりと言えば、テーブルの上の小さな蝋燭の火と月明かりに見立てたライトのみ。テーブルの横にある水を入れた小さな器は、ライトの光を反射して、天井に四角の薄明るい光の波模様を映し出し、あたかも庭の池が月の光を反射しているような幻想的な雰囲気を漂わせます。
隣の「茶の間」は、「こめのめぐみ」。
何かの祝杯なのでしょうか、秋も深まった部屋で左右に席を配置し、酌み交わすお酒の水滴の様な器が、手に面白味を伝えます。席の合間の奥には、黒の台の上に黒い大きな盃。天井から垂れ下がったこめの糸のひとつひとつの粒は、恵みのお酒の滴となって、盃を満たすのでしょう。実りの秋を愛でるのか、ふたりの間のお祝いごとなのか、部屋を満たす芳醇な香りが満ち足りた日々を包み込みます。

「そうそう、米山さんを呼びましょうね」
米山さんとお会いするのは、3年振りです。2011年の名古屋市美術館での「ほどくかたち、つむぐけしき」展の後で、いろいろお話を聞かせていただきました。こうしてまた、米山さんの作品を前にすると、何だか懐かしい気分になります。
「ずいぶん、お久しぶりです。来ていただいてありがとうございます」
いえいえ、こちらこそ楽しませてもらっております。
「間想の間」の「いろはなく」は、3年前の展示を思い起こさせる女性の立像です。この部屋は、中庭を望む位置にあるので、間想の間となっているそうですが、作りが変わっていて、壁が赤色です。それだけに、立像作品の白との対比が際立ちます。使っている素材は、吉野の手漉き和紙ですが、この様な形にする前には、和紙をいちど“ほどく“作業があるそうです。手漉きによって繊維を絡ませ、紙板の上で乾燥させて出来た和紙を、米山さんは、その工程を遡るように、水につけて繊維の絡みをやさしくほどき、改めて造形の作業に入ります。肩から胸にかけてのやわらかな曲面や、左の肩紐から足元までのしっかりしたドレス部分は、その様にしてできるのですね。

1階から階段を降りた先の茶室「太郎庵」には、地面を流れる水を表現した作品「にわたづみ」があります。この部屋の雪見障子を通しては見えませんが、「爲春亭(いしゅんてい)」の庭に、湧き水の様な小さな滝があり、そこから庭を横切るように水の流れができています。

四畳半の部屋の中では、床の間の掛軸から、湧き出る様に流れる小さな滝、そこから広がる滑らかな流れや波打つ水の表面を和紙で形づくり、まるで、庭にある水の流れを部屋の中に持ち込んだかの様です。

この後、米山さん、祖父江さんのお二人と桜の間で、お抹茶と和菓子をいただきました。この展示期間中は、米山さんデザインの和菓子も特別メニューとして用意されています。

受付から外に出て、庭に回ると、茶室「知足庵」が見えてきます。中に入る事は出来ませんが、窓から中を覗く事ができます。


庭から見た「爲春亭」です。外から作品を眺めるのも一興です。

屋内で作品を鑑賞し、お抹茶と和菓子を堪能し、はたまた庭に出て、窓越しに作品を眺めるなど、「爲春亭」は、いろいろ楽しめそうです。
※注)美術館での撮影は本来禁止ですが、今回は、事前に美術館の了承を得て撮影しました。
「瓢の間」の襖を隔てた隣に「かげてらす」。
黒のレースカーテンを分けて祖父江さんと中に入りました。
部屋の中央に黒いテーブル、その上に白い巻紙を敷いて、銀色のステンレス盆をのせる。
テーブルを挟んで向かい合うように二人が座る設定です。葵の間の「かしもぐさ」は、ひとりのお茶会を楽しむ部屋でしたが、ここは二人用。

廊下と部屋を隔てる黒いレースカーテンは、部屋を少し薄暗くして秋の夜を演出しています。カーテン生地の上に、黒い線で葉と枝が描かれていますが、襖に描かれた同じ図柄を、祖父江さんが、ご自身で描いたのだそうです。部屋の中の明かりと言えば、テーブルの上の小さな蝋燭の火と月明かりに見立てたライトのみ。テーブルの横にある水を入れた小さな器は、ライトの光を反射して、天井に四角の薄明るい光の波模様を映し出し、あたかも庭の池が月の光を反射しているような幻想的な雰囲気を漂わせます。
隣の「茶の間」は、「こめのめぐみ」。
何かの祝杯なのでしょうか、秋も深まった部屋で左右に席を配置し、酌み交わすお酒の水滴の様な器が、手に面白味を伝えます。席の合間の奥には、黒の台の上に黒い大きな盃。天井から垂れ下がったこめの糸のひとつひとつの粒は、恵みのお酒の滴となって、盃を満たすのでしょう。実りの秋を愛でるのか、ふたりの間のお祝いごとなのか、部屋を満たす芳醇な香りが満ち足りた日々を包み込みます。

「そうそう、米山さんを呼びましょうね」
米山さんとお会いするのは、3年振りです。2011年の名古屋市美術館での「ほどくかたち、つむぐけしき」展の後で、いろいろお話を聞かせていただきました。こうしてまた、米山さんの作品を前にすると、何だか懐かしい気分になります。
「ずいぶん、お久しぶりです。来ていただいてありがとうございます」
いえいえ、こちらこそ楽しませてもらっております。
「間想の間」の「いろはなく」は、3年前の展示を思い起こさせる女性の立像です。この部屋は、中庭を望む位置にあるので、間想の間となっているそうですが、作りが変わっていて、壁が赤色です。それだけに、立像作品の白との対比が際立ちます。使っている素材は、吉野の手漉き和紙ですが、この様な形にする前には、和紙をいちど“ほどく“作業があるそうです。手漉きによって繊維を絡ませ、紙板の上で乾燥させて出来た和紙を、米山さんは、その工程を遡るように、水につけて繊維の絡みをやさしくほどき、改めて造形の作業に入ります。肩から胸にかけてのやわらかな曲面や、左の肩紐から足元までのしっかりしたドレス部分は、その様にしてできるのですね。

1階から階段を降りた先の茶室「太郎庵」には、地面を流れる水を表現した作品「にわたづみ」があります。この部屋の雪見障子を通しては見えませんが、「爲春亭(いしゅんてい)」の庭に、湧き水の様な小さな滝があり、そこから庭を横切るように水の流れができています。

四畳半の部屋の中では、床の間の掛軸から、湧き出る様に流れる小さな滝、そこから広がる滑らかな流れや波打つ水の表面を和紙で形づくり、まるで、庭にある水の流れを部屋の中に持ち込んだかの様です。

この後、米山さん、祖父江さんのお二人と桜の間で、お抹茶と和菓子をいただきました。この展示期間中は、米山さんデザインの和菓子も特別メニューとして用意されています。

受付から外に出て、庭に回ると、茶室「知足庵」が見えてきます。中に入る事は出来ませんが、窓から中を覗く事ができます。


庭から見た「爲春亭」です。外から作品を眺めるのも一興です。

屋内で作品を鑑賞し、お抹茶と和菓子を堪能し、はたまた庭に出て、窓越しに作品を眺めるなど、「爲春亭」は、いろいろ楽しめそうです。
※注)美術館での撮影は本来禁止ですが、今回は、事前に美術館の了承を得て撮影しました。
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