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森下真樹×束芋 《錆からでた実》

森下真樹×束芋 《錆からでた実》 
  京都芸術劇場 春秋座 2014.11/8-9 (11/9)

 森下真樹(舞踏家)と束芋(現代美術家)のコラボによる、コンテンポラリーダンス作品《錆からでた実》の公演が、京都造形芸術大学内にある京都芸術劇場・春秋座で行われた。振付は森下、舞台美術は束芋、構想はふたりで行い、ダンサーは、きたまり、川村美紀子と森下の3名だ。初演は、昨年、東京の青山円形劇場だが、舞台構造がかなり異なるので、今回に向けて若干の作品修正もあったようだ。
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森下は、これまで映像を作品の中に取り込んだ事はなかったが、束芋とは、年齢や家族構成(3姉妹)等が同じことから交流が始まり、ようやくこの作品にたどり着いた。束芋も振付家とのコラボは2回経験していると言うものの、従来作品のアレンジに留まっており、構想から始めるのは今回が初めてだ。また、ダンサーの2人も、共にコレオグラフィーや横浜ダンスコレクション等の受賞者というこの個性派を、森下がどの様にまとめ上げるのか。《錆からでた実》は、全てがチャレンジなのだ。
公演の開始早々、カーテンが上がり始めて、3人のダンサーの足だけが見えるところで止まる。足だけを見せるダンスが始まる。しかしカーテンの上には、ダンサーの影と思える映像が映し出されており、本当の人影であるかの様な動きを見せる。後半部分でも、映像が映った背景の後ろにダンサーが入ると、その映像の中に人影が映し出され、まるで人が動き回っている様にみせる。この様に映像が、ダンスと密接な関係で制作されているのは、あまり例が無いと言ってもいいだろう。
映像は、通常、ダンスを引き立たせる役目になるが、束芋の場合、ひとつの作品として成立する程の強烈な個性と完成度を持っている為に、ダンスそれ自体を飲み込んでしまう危険性も孕んでいる。舞台を見ていると、激しく踊るダンサーに目が釘づけになっていたり、鮮やかな映像に目を奪われたりと、ダンスと映像の間を視線が行きつ戻りつしているのに気づく。だが、3人のダンサーのパワー溢れる動きの前では、心配は無用であった。むしろ、束芋の映像の持つ存在感が、ダンスと激しくぶつかり合う事で、作品の熱気を更に増加させる事になった。
ダンサー3人は、まるで3姉妹だ。3人の群舞を見ていると、長女(森下)の振付で、要領良しの次女(きたまり)とやんちゃな三女(川村)をうまくまとめ上げている様に見える。この長女なしでは、これだけ個性の強い人の集りを制御できないのではと思わせる。ダンスは、群舞とソロの両方が演じられ、ソロの時は、それぞれのダンサーにかなり自由度が与えられていた様だ。川村などは、いつもの激しい動きが戻り、舞台狭しとばかりにパフォーマンスを見せつける。遂には、舞台下の観客席前のスペースで踊り出すほどで、殆ど暴走と表現した方がわかりやすいかもしれない。しかし、これも森下の振付の想定内の事なのだろう。計算された動きの群舞と自由奔放なソロが、対比をなして、重層的なパフォーマンスとなっている。
この作品のタイトル《錆からでた実》は、何やら奇妙な言い方だ。その意味するところは、「身から出た錆」の『錆より更にその先に、実がある』(苦しんだからこそ、その先に何かがある)という希望なのだそうだ。公演を見た限りでは、確実に、いくつもの実りを収穫できたようだ。

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<講演後のトーク>
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公演後のトーク(束芋&森下)では、森下さんの要望で映像を修正したとの話が出たので、アニメーションをそんなに短時間で修正できるのですかと質問したら、
 「そんなあんた、大変なのよ」
と、束芋さんが答えていました。
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トークの最中に、控室に戻る途中の、きたまりさんと川村美紀子さんが近くをゆるゆると通りかかったので、呼び止めて一緒にトークに入ってもらう事になりました。川村美紀子は、ダンスはあんなに過激なのに、トークになると借りてきた猫みたいにおとなしかったのが印象的でした。
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