現代美術in豊川2015《豊穣なるもの》アーティスト・トーク(佐藤雅晴
現代美術in豊川2015 《豊穣なるもの》アーティアスト・トーク
豊川市桜ケ丘ミュージアム・豊川信用金庫旧いなり支店・古民家(2015.1/17-2/22)
1/17(土)13:00~ 桜ケ丘ミュージアム・1F
2)佐藤雅晴《ヤッホー!、カップル、鏡、他》
見て面白かったのは、この作品。現代アートによくある抽象的は映像表現ではなく、実写を忠実にアニメ化した様なもので、何がアートなのかと訝ってしまうが、よく見ると何だかおかしい。具象映像であるだけに返ってどの様な制作意図なのかと、考え込んでしまう。
-----<トーク>--------------------
こんちには、佐藤です。僕の作品は、基本的にアニメーション作品をずっと作り続けているんですけれども、アニメーションというと、スタジオ・ジブリさんとか、所謂テレビで流れているアニメーションというのは、何もないとこから、キャラクターなり、世界観なりを想像したりします。が、僕の場合は、自分の身の周りにある人物とか風景だったりとかを、カメラで映像や写真を撮ったりして、そのデーターをパソコンに取り入れて、PhotoShopというソフトで、ペンタブレットというマウスがペン状になっているものがあるんですけれども、それでトレースします。

1枚いちまい、動画だったら1秒間に24枚の静止画を描き出して、そしてその静止画をトレースして、色を塗って、後で繋ぎ合せて、また映像に戻していって・・・、こういう形でアニメーションしていきます。なにかこう実写化、データにして画像にして、また映像に戻していくという手法を取っています。
今回このミュージアムの話を1年前位にいただきまして、この資料室の場所を与えられる事になって、実際に、この場所は見た事無かったんですけど、この巨大なガラスケースとか、こちらの壁の展示ケースがあるというのを知って、でガラスでこう反射していく事が出来るんじゃないかな、というのがあったので、この作品のテーマで、反射する世界というか、反響する世界とか、反転していく世界とかというのをイメージしながら、6点の作品を作りました。

因みに今、「ヤッホー」って言っているこの声のモデルが、後ろの鏡で歯磨きをしている女の子が、「ヤッホー」って言ってくれて、それを録音して、こっちの作品に入れ込んだりとか、そういう関係でこの6点の作品の中でも呼応していたりしています。具体的な作品のコンセプトみたいなものは、僕は、なるべく具体的なビジュアルを作っているので、なるべく見たお客さんが自由な解釈を取れる様にしたいので、詳しくは僕からは、解説できないので、ま、ご自由に見ていただければな、と思います。
------------------------------
《ヤッホー!》
この展示室とその周りに、「ヤッホーーー」の声が響く。小さな子供の声なのでそれ程大きなものではないが、美術館の(静かな)環境の中では、とにかく目立つ。
手袋の様な小猿の縫いぐるみを操りながら、街並の見えるマンションのベランダの様な場所で、ひたすら「ヤッホー」の動作を繰り返す。ディスプレーが2台、背中合わせで置いてあり、両方の画面で、ヤッホー動作の映像を映している。反対側の映像は、ガラスケースに反射して見える。


よく見ると、街並が異なるのに気が付く。この2匹の小猿(手にはめた縫いぐるみ)は、離れた場所(のマンション)から、片方がヤッホーと呼びかけている時は耳を澄まし、次は、自分がヤッホーと返事をしている。それを延々と繰り返す。本当にただそれだけの《ヤッホー!》なのだが、見入ってしまう。それにしても、この2匹は、互いが見えているのだろうか。街並の映像からは、相手がどこにいるのかとても見えそうにない。ヤッホー動作を見ても、相手を見ながら呼びかけているとは思えない。見えない相手に向かって、ヤッホーと呼びかける。確かにヤッホー返事は返って来るが、相手がどこにいて、どんな小猿で何をしているのか、全くわからないままヤッホーの応答を繰り返す。何だか、ネット上のSNSのやり取りを連想させる。
《鏡》
このヤッホーの声の持ち主である少女は、鏡に向かって、これもまた延々と歯を磨いている。このディスプレーは、壁に掛けられているが、この展示室を出て、ぐるりと反対側に回ってその壁を見ると、少女の後姿が映し出されたディスプレーが掛けられている。勿論、鏡の前で歯磨きをしている。歯磨き少女の前姿と後姿をふたつのディスプレーに映しただけ・・・、にしてはおかしい。


展示室側の映像は、少女の正面が鏡に映っているが、その鏡に向かって立っている少女の実体は見えない。 反対側の壁に掛けられたディスプレーは、少女の背中を映しており、始め、このふたつは、鏡の前の少女を反対方向から見たものと思ったが、そうではない。どちらも鏡に向かって立っている少女なのだが、ひとつは(展示室側)は、鏡に映る少女の実体が見えない。もうひとつ(反対の壁)は、歯磨き少女を背後から見ている人が、鏡に映っていない。どちらも視線が鏡に向き合う方向だが、視点の持ち主が見えない。
《カップル》
どこかの喫茶店だろうか、窓際の席にカップルが座ってコーヒーなどを飲んでいる、という何気ない日常風景と思ったら、何だかおかしい。

窓ガラスに写る二人は、手前に座る二人と位置が反対。室内の女性がコーヒーカップを持っているが、ガラスに写るのは、コーヒーカップを手にした男性。ガラスには、二人の他に室内の家具の様なものが写っているが、同時に外の植え込みや歩道、信号機も見える。勿論、位置が逆になって座っているふたりも。現実世界が単に写り込んでいると思っていたら、奇妙な世界が見えてきた。チラシの中の作者のコメントに、「Facebook上で同性同名のもうひとりの《妻》から友達申請が来た」とありました。妻の様な人はホントに妻なのか、そんな気味のわるいなりすましを想像してしまいます。
豊川市桜ケ丘ミュージアム・豊川信用金庫旧いなり支店・古民家(2015.1/17-2/22)
1/17(土)13:00~ 桜ケ丘ミュージアム・1F
2)佐藤雅晴《ヤッホー!、カップル、鏡、他》
見て面白かったのは、この作品。現代アートによくある抽象的は映像表現ではなく、実写を忠実にアニメ化した様なもので、何がアートなのかと訝ってしまうが、よく見ると何だかおかしい。具象映像であるだけに返ってどの様な制作意図なのかと、考え込んでしまう。
-----<トーク>--------------------
こんちには、佐藤です。僕の作品は、基本的にアニメーション作品をずっと作り続けているんですけれども、アニメーションというと、スタジオ・ジブリさんとか、所謂テレビで流れているアニメーションというのは、何もないとこから、キャラクターなり、世界観なりを想像したりします。が、僕の場合は、自分の身の周りにある人物とか風景だったりとかを、カメラで映像や写真を撮ったりして、そのデーターをパソコンに取り入れて、PhotoShopというソフトで、ペンタブレットというマウスがペン状になっているものがあるんですけれども、それでトレースします。

1枚いちまい、動画だったら1秒間に24枚の静止画を描き出して、そしてその静止画をトレースして、色を塗って、後で繋ぎ合せて、また映像に戻していって・・・、こういう形でアニメーションしていきます。なにかこう実写化、データにして画像にして、また映像に戻していくという手法を取っています。
今回このミュージアムの話を1年前位にいただきまして、この資料室の場所を与えられる事になって、実際に、この場所は見た事無かったんですけど、この巨大なガラスケースとか、こちらの壁の展示ケースがあるというのを知って、でガラスでこう反射していく事が出来るんじゃないかな、というのがあったので、この作品のテーマで、反射する世界というか、反響する世界とか、反転していく世界とかというのをイメージしながら、6点の作品を作りました。

因みに今、「ヤッホー」って言っているこの声のモデルが、後ろの鏡で歯磨きをしている女の子が、「ヤッホー」って言ってくれて、それを録音して、こっちの作品に入れ込んだりとか、そういう関係でこの6点の作品の中でも呼応していたりしています。具体的な作品のコンセプトみたいなものは、僕は、なるべく具体的なビジュアルを作っているので、なるべく見たお客さんが自由な解釈を取れる様にしたいので、詳しくは僕からは、解説できないので、ま、ご自由に見ていただければな、と思います。
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《ヤッホー!》
この展示室とその周りに、「ヤッホーーー」の声が響く。小さな子供の声なのでそれ程大きなものではないが、美術館の(静かな)環境の中では、とにかく目立つ。
手袋の様な小猿の縫いぐるみを操りながら、街並の見えるマンションのベランダの様な場所で、ひたすら「ヤッホー」の動作を繰り返す。ディスプレーが2台、背中合わせで置いてあり、両方の画面で、ヤッホー動作の映像を映している。反対側の映像は、ガラスケースに反射して見える。


よく見ると、街並が異なるのに気が付く。この2匹の小猿(手にはめた縫いぐるみ)は、離れた場所(のマンション)から、片方がヤッホーと呼びかけている時は耳を澄まし、次は、自分がヤッホーと返事をしている。それを延々と繰り返す。本当にただそれだけの《ヤッホー!》なのだが、見入ってしまう。それにしても、この2匹は、互いが見えているのだろうか。街並の映像からは、相手がどこにいるのかとても見えそうにない。ヤッホー動作を見ても、相手を見ながら呼びかけているとは思えない。見えない相手に向かって、ヤッホーと呼びかける。確かにヤッホー返事は返って来るが、相手がどこにいて、どんな小猿で何をしているのか、全くわからないままヤッホーの応答を繰り返す。何だか、ネット上のSNSのやり取りを連想させる。
《鏡》
このヤッホーの声の持ち主である少女は、鏡に向かって、これもまた延々と歯を磨いている。このディスプレーは、壁に掛けられているが、この展示室を出て、ぐるりと反対側に回ってその壁を見ると、少女の後姿が映し出されたディスプレーが掛けられている。勿論、鏡の前で歯磨きをしている。歯磨き少女の前姿と後姿をふたつのディスプレーに映しただけ・・・、にしてはおかしい。


展示室側の映像は、少女の正面が鏡に映っているが、その鏡に向かって立っている少女の実体は見えない。 反対側の壁に掛けられたディスプレーは、少女の背中を映しており、始め、このふたつは、鏡の前の少女を反対方向から見たものと思ったが、そうではない。どちらも鏡に向かって立っている少女なのだが、ひとつは(展示室側)は、鏡に映る少女の実体が見えない。もうひとつ(反対の壁)は、歯磨き少女を背後から見ている人が、鏡に映っていない。どちらも視線が鏡に向き合う方向だが、視点の持ち主が見えない。
《カップル》
どこかの喫茶店だろうか、窓際の席にカップルが座ってコーヒーなどを飲んでいる、という何気ない日常風景と思ったら、何だかおかしい。

窓ガラスに写る二人は、手前に座る二人と位置が反対。室内の女性がコーヒーカップを持っているが、ガラスに写るのは、コーヒーカップを手にした男性。ガラスには、二人の他に室内の家具の様なものが写っているが、同時に外の植え込みや歩道、信号機も見える。勿論、位置が逆になって座っているふたりも。現実世界が単に写り込んでいると思っていたら、奇妙な世界が見えてきた。チラシの中の作者のコメントに、「Facebook上で同性同名のもうひとりの《妻》から友達申請が来た」とありました。妻の様な人はホントに妻なのか、そんな気味のわるいなりすましを想像してしまいます。
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