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アーツチャレンジ2015 見学ツアー(田中里奈

アーツチャレンジ2015(2015.2/17-3/1)見学ツアー(田中里奈
 愛知芸術文化センター館内13か所 (2/17(火)14:00~16:15)
※案内は、選考委員の信州大学人文学部准教授の金井直(かない ただし)氏。

◇田中 里奈 《記憶の森をあるく》 絵画インスタレーション 地下1階フォーラム北側壁面
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 田中です、宜しくお願いします。私は、いつもは、こういった壁面に壁画を描くかたちではなくて、キャンバスを木枠に張った一般的なペインティングを描いています。これまで画面に対峙するのしか描いて来なかったんですけど、今回は特殊な場所で、階段の様な角度がついている壁と、柱に囲まれた空間が面白いなと思いまして。で、森という題材を選んだのと、柱と壁の存在が、木と木の間を潜り抜ける感覚とリンクするんじゃないかと思い、そうした性質を利用して、こういう森をイメージした作品を作りました。
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 元々、人の記憶にすごく興味がありまして、そこから考えながら描いているんですけれども、写真とかだと、一般的にその瞬間をひとつ切取る様な作品になると思うんですけど、絵画だともっと自由な事ができるなと思ったので。今回の作品は、向って右から左にかけて夏から秋に向かう様に時間軸の流れを作っています。
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 あとは、実際に森の中を歩いていたりすると、自分の(目線の)角度とかによって、視点がころころと変わると思うんですけども、そういう事を考えながらいろんな角度から、基本的には足元を見下げる様な構図になっているんですけども。
 こういう所はちょっと上から斜めに、結構上の方から結構見下ろす様な視線になっていたりとか。ここはホントに、タンポポ、見えないと思うんですけども、普通だと奥に続いている林が描かれるはずの光景なんですけども、そこをあえて描いていなくて、基本的に地面を見下げる構図になっているんですけど、そこのふたつに分かれている木のところだけは、遠くを見通せる様に木を入れて、そういう面でも画面を操作しながら描いています。
以上です。

-金井: ありがとうございます。田中さんのご提案は、まずこの場所ありきと言いますか、本当に沢山の視線や視点が開かれる場を活かすプランだったんですね。これが先行委員の中では最大の勝因として評価されたところでした。田中さん自身これまで作品を作られる時、わりと俯瞰構図であるとか、視点を意識した絵をお描きになっていましたね。
田中)ええ、そうです。
金井: ご自身が平面の中でやっておられた実験を、こういった機会にスケールアップして試みられたという事で、アーツチャレンジの主旨が活かされる制作をしていただけたと思います。

田中)スタッフの方から説明があったかもしれませんが、見るところを5ヶ所決めてありまして、右に2ヶ所、左柱の向こうに1ヶ所、正面の通路コーンの置いてある所と上のエスカレーター上った所、5ヶ所、立ち位置を決めてあります。そこに立って作品を眺めていただいて、私の身長で作っているので、(背の)高い方は低くなって見ていただけると、川とか苔とかが、繋がる様になっています。普通に白い壁に作品が掛っていて、絶対同じ構図にしか見えない作品ではなくて、立つ位置を変えると構図が変わる様になっています。良ければいろんな角度から見ていただけると嬉しいです。
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-金井: 水流をひとつのモチーフの中心にするというのは、それに限ると思いました?最初からそういうアイディアでしたか?
田中)そうですね、元々その、水・・・昔から絵画で光とか水とか風とか形が無いものをどう描いていくのかというのは、作家によって多分いろいろ考えながら描いてるんですけど、本当に個性が出るところだなと思っていて。で、丁度この刷毛を使っていろいろ描く事をやっていた時に、物質的には水がすごく興味があったので、実験的にドローイングをしていって、水流が今なら描けるなと思ったので、今回この作品にハイ。
 あとこの水流を奥から手前にジグザグの様なZ(ゼット)の様な形とかで作ると、必然的に手前、中間、奥の様な距離感が出るんですけども、そこをなるべく手前の苔の所と奥の苔は、距離がすごくあるはずなんですけれど、あえてクリーク(?)させたりとか、平面でしか出来ない事をいろいろ考えてやってます。

-金井: 水の流れだけ確かにおっしゃること、奥行きと言う話になるんでしょうけど、例えば、苔と言われているのが、結構、絵具がしっかり載ってあって、それが我々にとっての全景と後景でサイズが変わんないとか、いくつかのレイヤーが作品の中に重ね合わされていて、そこに画面の奥深さとか距離が出ているかと思いました。
 あと、今申し上げた通り、苔と言われる部分は、ご覧の通り割としっかり載っているんだけども、それ以外のところは割とこう染物の様な、あるいはステンシルで貼り付けた様な、いかにも綿布に描かれたらしいテクスチャーと油絵らしい濃密さが画面のメリハリになって。愛知県美の皆さんの前ですが、何かこう、春草と光琳が一変にこの場に現れてくれたかの様な、さわやかな作品だと思います。

<質問コーナー>
Q1)視点を変えるとの話がありましたが、日本画ではその様な事をやっていたかなと思いますが、視点を変えた方が面白いというのか、苔とかそのようなものを描きたかったのか、どうなのでしょう。

田中A) それは両方ありまして、例えば視点を変えているところから話していくと、絵画、すごく自由度が高い素材で、描くのであれば、ひとつの方向からではなくて・・、例えば記憶を描くのに、一瞬の記憶であれば、ひとつの視点で事足りると思うんですけど、年月を重ねたりですとか、5分間歩いている記憶を一枚の絵に入れるとなった時、ひとつの視点からでは無くて沢山の視点で、自分が経験してきた目で見た光景をひとつの絵画にまとめられると、私が経験した5分間をひとつにまとめられるじゃないかなと思ったのが、始まりです。
 日本画もあると思うんですけども、有名なところだとピカソとかが、目の位置とか顔の角度とか鼻の向きとかすごくいろいろ操作して描いているのも、多分そういう所につながるんじゃないかな、と私は思っています。あとは、ここの植物が逆向きに配置されているのは、昔の因果絵画(→絵因果経(えいんがきよう): 仏伝経典のひとつで、下段に経文を書写し、上段に経文の内容を説明した絵画を描いたもの)とかは、結構そういうのが多くて、手前が大きくて後が小さいみたいな遠近法とか、手前がはっきりしていて奥がぼやけている様な空気遠近法(→戸外の風景に於いて、遠景に向かうほどに対象物は青味がかって、且つ、輪郭線が不明瞭になり、霞(かす)んで見える現象を利用したもの)ではなくて、インド絵画だと奥も手前も結構同じ様な感じで扱われていて、それもちょっと面白いなと思って、そこからも発想を得ています。

-金井: この場所が、否応なく持っている複数の視点であるとか、複数の距離を作品のなかでがっちりと受け止められた印象を持ちます。中々難しい場所だったと思うんですけど、長くここに滞在されて制作されている様子でした。ありがとうございました。
田中)ありがとうございました。

*****************************************

後日、作品を見ていたら、田中さんにお会いした。
5ヶ所の立ち位置からの構図を、どの様に描いたのかを伺った。
 「壁側の絵から制作を始めて、ある程度描いたところで、柱部分に取り
  掛かりました。立ち位置から見て絵がつながる様に構図を決めました」
制作は、3ヶ月程費やしたそうで、展示が2週間で終わるのは、
 「ちょっと残念です」
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