ファン・デ・ナゴヤ2016 「新ナゴヤ島」
ファン・デ・ナゴヤ美術展2016
期間: 2016年1月8日(金)〜1月24日(日)
場所: 名古屋市民ギャラリー矢田
今回のもうひとつのプロジェクト展示は、「新ナゴヤ島」です。
企画:N-mark
出品作家:
石田達郎、北山美那子、クロノズ、竹田尚史、徳重道朗、森田美里、山下拓也
友情出展:加藤良将、鈴木優作、他
「N-mark」選出の現代アート名古屋オールスターズだろうか。

新ナゴヤ島の解説は、以下です。(既にご存知の方はスキップして下さい)
『この地図は我々アートリサーチ団体「N-mark」が新たなアートの可能性を求めて、アート界の秘境「新ナゴヤ島」を探検した成果である。1998年-あいち諸島カスガイ島、神領港を出港した。その航海は数年に渡り、幾度も大きな嵐に見舞われた。帆は破れ、羅針盤はその機能を失っていた。霧が立ち込める日が幾日か続き、食料も底をつきかけたその時突然、霧が晴れ渡り我々の目の前に巨大な島が出現した。 上陸した我々が最初に出会った女性アーティストは2階建て住居を身にまとうように、2階の床から上半身を、1階の天井から下半身を出し、身体から白い液体をたらしていた。それは儀式のようなアート作品「hanky panky pancake」であった。そこには多くの原住民が集まり、そのしたたり落ちた液体を焼いて食していた。ここにはアーティストが生きるための豊かな環境があり、それを必要とする原住民が生息していることを確認することができた。この島にはアートにまつわるすべてのものが揃っている。このアートにとって豊かな秘境を我々は「新ナゴヤ島」と名づけることにした。その後も探検の中で多くのアーティストと遭遇した。しかし彼らは他のどの地域とも異なる独特な作品を創りだしていた。長い年月発見されることのなかった島の中で、アーティスト達は独自の方法で生き抜き、進化を遂げ、それぞれの生態系を築いていたのだ。 このガラパゴス化した新ナゴヤ島には、あらゆる情報が共有され均一されるグローバル時代において、唯一オリジナルの表現や個性を育む土壌がある。そこに生息するアーティスト達それぞれの物語をこの展覧会では見ることができるかもしれない。 この地図は、N-markが大きな嵐に見舞われ続けてきた時代に、霧の中でぼんやりと見た新ナゴヤ島の地図である』

《KURONOZ(クロノズ) 》・・・作品名称兼アーティスト属名(本名:クロノヤスコ)
黒髪ロングヘアのウィッグ+黒縁メガネ+水色ワンピース(+真っ赤な口紅?)で、誰でもクロノズに変身できる。「クロノズ化した来場者は会場を一瞬にして異空間にしてしまう」らしい。内覧会でのオープニング・パーティにも出現していたが、男性の変身に至っては確かに異空間。



《NEPENTHES(ネペンテス) 》 加藤良将
ネペンテスとは、赤道付近に生息する食虫植物(ウツボカズラとも言う)です。筒状の捕虫袋を持ち、入って来た虫を逃さない様に、パタッと蓋を閉じてしまうやつですね。この作品も、蚊帳(知らない方の為に→夏の睡眠時の虫よけ網)が天井から吊ってあり、人が「何だろう」と立ち止まっていると、パタッと網を被せてしまいます。


《私はいつも旅をしている》 竹田尚史
竹田さんの作品は、先回のあいちトリエンナーレでも拝見したが、特徴は、「測り」。ああ竹田さんだ。
今回は、頭の中で起きている旅の様子、なのだ。



《捨てられた子ども》 北山美那子
「アーティストの言葉」
『”結局どこにも行かないで、ここにいるよ。ここで、世界にも珍しい場所を作っていこう”こことは、名古屋市守山区にある東谷山、名古屋市で一番高い山といっても260m。しかし、ここには、ニホンカモシカ、ニホンキツネ、ニホンリス、ムササビ、ノウサギ、イノシシなどの野生動物がいます。かつて、日本の森には野生動物がいないから死んだ森だ、絶滅したのは森で遊ぶ日本の子どもだ、と言われた。しかし、ごんぎつねは帰ったし、子どもらの声も響くようになった。それは、山を一つの塊として街から眺めるのではなく、いつかは頂上につながる緩やかな道筋の中に身を置いた時にみえてくる。私は、展覧会の度に山の不法投棄物を拾い、ゴミの晴れの舞台を作り、ギャラを処理費用に当てていく事にしました』



《いつ、どこで、だれが、どうした》 石田達郎
物干しラックに布団をのせたものと、2014年作品《斜面の集落》のインスタレーション。これに本人のパフォーマンスがミックスされる。


《六甲オリエンタルシャムロックちゃん》《ばいばいの写真》 山下拓也
床には無数のシャムロックちゃんが横たわっている。シャムロックとは三つ葉のクローバーの意味だそうで、2005年愛・地球博アイルランド館のゆるキャラ・マスコットでした。部屋の奥の壁には、今は営業を停止した、六甲オリエンタルホテルの画像が写る。ホテルのカーテンが、びりびりに切り取られている。床に横たわるシャムロックちゃんは、この生地で作られているらしい。山下の作品には、こういった使われなくなったマスコットがよく登場する。一時は、イベントのマスコットとして生命を与えられたものが、その終了と同時に忘れ去られてしまう。
副田一穂は、こう説明する
『商品やイベントのマスコット・キャラクターたちもまた、商品の販売が終わり、イベントが閉幕すると、倉庫の片隅で忘れ去られてしまう。まさに横浜フリューゲルスのとび丸が、出資会社の経営上の都合という大人の事情によって活躍の場を失ってしまったように。彼らはごっこ遊びのなかで「正しく」死ぬことができないまま取り残され、しかもその遊びが再開される見込みはもはやない。こうして、キャラクターたちは生と死との狭間で永遠に引き延ばされた停止状態となる』
そしてこれを「アンデッド(不死者)の群れ」と表現した。
プロジェクタに映る六甲オリエンタルホテルも似た様なものかもしれない。開業以来、70年以上続いた老舗の高級ホテルではあるが、某ホテルグループ傘下で経営統合、閉鎖された。外資への売却の話も出たが、現在に至るも閉鎖状態のままにある。アンデッドのままなのだ。





《N-mark Open Office》 N-mark

《GLOBAL SUIT》鈴木優作
鈴木は、世界の山ちゃんから手羽先の骨を提供いただき、自身のアートスーツを作成。
遠くからだと稲わらで作った様に見えるが、全て手羽先の骨を使用して作成している。これを着て展示会場内でパフォーマンスもやるそうだ。「新ナゴヤ原人」などと名前がついたらしい。

《h123》 徳重道郎
「アーティスト説明」
『日常のなんでもない風景が、ちょっとしたきっかけで、全く違った風景に見えることがある。例えば狭い空間なのに、そこに世界や宇宙を感じたり。今回の作品では、それぞれ別の世界に属するものを高さを揃える事で一つの空間の中に配置した作品。狭い空間に特別な空間を生み出している』



《赤の後》 森田美里
タイトルの“赤”は、2014年の個展《山をつぶす人》の作品が、赤を主体としている事に由来するのだろう。森田さんは、元々芸大での専攻は絵画だったが、学生時代から現代アート(の立体)に走ったそうだ。
これまでは、ティッシュを千切って接着剤と混ぜたものを材料に、牛に似た形態の想像上の生物を作ってきた。異形の生物とでも言うのか。
※参考) 《Kidnap》2013年 《Golden slumber》2013年

※参考) 《山をつぶす人》︎2014年

今回は、新聞紙を主体に接着剤で固め、その上に主に青系統で着色している。先回は、赤が印象に残る作品だったが、今回は、ブロンズの様な青が主体。うっすらと新聞記事も見える。
ブルーシートを使った小山の上に、3体の異形の生物が乗っている。どれも皆、不安定な足場にぐらつきながらも必死に立ち上がり、空に向かって吠えているかの様だ。これまでが、牛を思わせる形態で、どっしりとした安定感を見せていたので、随分と変化を感じさせる。肌触りも、従来は、もこもこ感があったが、目の前の3体の皮膚は、ぬめぬめとべたつく様な湿りがある。





森田さんに聞いてみた、
-ブルーシートの山に載せたのは?
「アトリエで使っているブルーシートをそのまま持って来ました。普段どんなところで作品制作をしているか見せようと思って」
(※シートの下には、小さな粘土ドローイングの人形様のものも置いてあった。横にはバケツ等もおいてあり、アトリエにあるもの全部もってきて積み上げた様な山だ)
-(想像上の)動物と思うが、足が、3本~5本あるし、皮膚感も従来と違いますね。
「本当になかなかうまく行かず、基本から壊した事もある。(足5本の)これは倒れてしまうので大変だった。」(それで足を1本追加した?)
-新聞紙の部分を削り取る様な事を?
「中の支持体も、エイッて折ってしまった事もある」
「でも、これが最後なので多くの人に見て欲しい」
-え?最後とはどういう事ですか?
「立体は、これが最後で、今後は絵画をやろうと思っている。これまで描いていないけど」

そう聞いて改めて作品を見ると、作家の苦悩する姿の投影にも思えてきた。
個人的には、森田さんの異形の生物の感じが好きだったので、少々残念だが、今後の作品に期待しよう。
期間: 2016年1月8日(金)〜1月24日(日)
場所: 名古屋市民ギャラリー矢田
今回のもうひとつのプロジェクト展示は、「新ナゴヤ島」です。
企画:N-mark
出品作家:
石田達郎、北山美那子、クロノズ、竹田尚史、徳重道朗、森田美里、山下拓也
友情出展:加藤良将、鈴木優作、他
「N-mark」選出の現代アート名古屋オールスターズだろうか。

新ナゴヤ島の解説は、以下です。(既にご存知の方はスキップして下さい)
『この地図は我々アートリサーチ団体「N-mark」が新たなアートの可能性を求めて、アート界の秘境「新ナゴヤ島」を探検した成果である。1998年-あいち諸島カスガイ島、神領港を出港した。その航海は数年に渡り、幾度も大きな嵐に見舞われた。帆は破れ、羅針盤はその機能を失っていた。霧が立ち込める日が幾日か続き、食料も底をつきかけたその時突然、霧が晴れ渡り我々の目の前に巨大な島が出現した。 上陸した我々が最初に出会った女性アーティストは2階建て住居を身にまとうように、2階の床から上半身を、1階の天井から下半身を出し、身体から白い液体をたらしていた。それは儀式のようなアート作品「hanky panky pancake」であった。そこには多くの原住民が集まり、そのしたたり落ちた液体を焼いて食していた。ここにはアーティストが生きるための豊かな環境があり、それを必要とする原住民が生息していることを確認することができた。この島にはアートにまつわるすべてのものが揃っている。このアートにとって豊かな秘境を我々は「新ナゴヤ島」と名づけることにした。その後も探検の中で多くのアーティストと遭遇した。しかし彼らは他のどの地域とも異なる独特な作品を創りだしていた。長い年月発見されることのなかった島の中で、アーティスト達は独自の方法で生き抜き、進化を遂げ、それぞれの生態系を築いていたのだ。 このガラパゴス化した新ナゴヤ島には、あらゆる情報が共有され均一されるグローバル時代において、唯一オリジナルの表現や個性を育む土壌がある。そこに生息するアーティスト達それぞれの物語をこの展覧会では見ることができるかもしれない。 この地図は、N-markが大きな嵐に見舞われ続けてきた時代に、霧の中でぼんやりと見た新ナゴヤ島の地図である』

《KURONOZ(クロノズ) 》・・・作品名称兼アーティスト属名(本名:クロノヤスコ)
黒髪ロングヘアのウィッグ+黒縁メガネ+水色ワンピース(+真っ赤な口紅?)で、誰でもクロノズに変身できる。「クロノズ化した来場者は会場を一瞬にして異空間にしてしまう」らしい。内覧会でのオープニング・パーティにも出現していたが、男性の変身に至っては確かに異空間。



《NEPENTHES(ネペンテス) 》 加藤良将
ネペンテスとは、赤道付近に生息する食虫植物(ウツボカズラとも言う)です。筒状の捕虫袋を持ち、入って来た虫を逃さない様に、パタッと蓋を閉じてしまうやつですね。この作品も、蚊帳(知らない方の為に→夏の睡眠時の虫よけ網)が天井から吊ってあり、人が「何だろう」と立ち止まっていると、パタッと網を被せてしまいます。


《私はいつも旅をしている》 竹田尚史
竹田さんの作品は、先回のあいちトリエンナーレでも拝見したが、特徴は、「測り」。ああ竹田さんだ。
今回は、頭の中で起きている旅の様子、なのだ。



《捨てられた子ども》 北山美那子
「アーティストの言葉」
『”結局どこにも行かないで、ここにいるよ。ここで、世界にも珍しい場所を作っていこう”こことは、名古屋市守山区にある東谷山、名古屋市で一番高い山といっても260m。しかし、ここには、ニホンカモシカ、ニホンキツネ、ニホンリス、ムササビ、ノウサギ、イノシシなどの野生動物がいます。かつて、日本の森には野生動物がいないから死んだ森だ、絶滅したのは森で遊ぶ日本の子どもだ、と言われた。しかし、ごんぎつねは帰ったし、子どもらの声も響くようになった。それは、山を一つの塊として街から眺めるのではなく、いつかは頂上につながる緩やかな道筋の中に身を置いた時にみえてくる。私は、展覧会の度に山の不法投棄物を拾い、ゴミの晴れの舞台を作り、ギャラを処理費用に当てていく事にしました』



《いつ、どこで、だれが、どうした》 石田達郎
物干しラックに布団をのせたものと、2014年作品《斜面の集落》のインスタレーション。これに本人のパフォーマンスがミックスされる。


《六甲オリエンタルシャムロックちゃん》《ばいばいの写真》 山下拓也
床には無数のシャムロックちゃんが横たわっている。シャムロックとは三つ葉のクローバーの意味だそうで、2005年愛・地球博アイルランド館のゆるキャラ・マスコットでした。部屋の奥の壁には、今は営業を停止した、六甲オリエンタルホテルの画像が写る。ホテルのカーテンが、びりびりに切り取られている。床に横たわるシャムロックちゃんは、この生地で作られているらしい。山下の作品には、こういった使われなくなったマスコットがよく登場する。一時は、イベントのマスコットとして生命を与えられたものが、その終了と同時に忘れ去られてしまう。
副田一穂は、こう説明する
『商品やイベントのマスコット・キャラクターたちもまた、商品の販売が終わり、イベントが閉幕すると、倉庫の片隅で忘れ去られてしまう。まさに横浜フリューゲルスのとび丸が、出資会社の経営上の都合という大人の事情によって活躍の場を失ってしまったように。彼らはごっこ遊びのなかで「正しく」死ぬことができないまま取り残され、しかもその遊びが再開される見込みはもはやない。こうして、キャラクターたちは生と死との狭間で永遠に引き延ばされた停止状態となる』
そしてこれを「アンデッド(不死者)の群れ」と表現した。
プロジェクタに映る六甲オリエンタルホテルも似た様なものかもしれない。開業以来、70年以上続いた老舗の高級ホテルではあるが、某ホテルグループ傘下で経営統合、閉鎖された。外資への売却の話も出たが、現在に至るも閉鎖状態のままにある。アンデッドのままなのだ。





《N-mark Open Office》 N-mark

《GLOBAL SUIT》鈴木優作
鈴木は、世界の山ちゃんから手羽先の骨を提供いただき、自身のアートスーツを作成。
遠くからだと稲わらで作った様に見えるが、全て手羽先の骨を使用して作成している。これを着て展示会場内でパフォーマンスもやるそうだ。「新ナゴヤ原人」などと名前がついたらしい。

《h123》 徳重道郎
「アーティスト説明」
『日常のなんでもない風景が、ちょっとしたきっかけで、全く違った風景に見えることがある。例えば狭い空間なのに、そこに世界や宇宙を感じたり。今回の作品では、それぞれ別の世界に属するものを高さを揃える事で一つの空間の中に配置した作品。狭い空間に特別な空間を生み出している』



《赤の後》 森田美里
タイトルの“赤”は、2014年の個展《山をつぶす人》の作品が、赤を主体としている事に由来するのだろう。森田さんは、元々芸大での専攻は絵画だったが、学生時代から現代アート(の立体)に走ったそうだ。
これまでは、ティッシュを千切って接着剤と混ぜたものを材料に、牛に似た形態の想像上の生物を作ってきた。異形の生物とでも言うのか。
※参考) 《Kidnap》2013年 《Golden slumber》2013年

※参考) 《山をつぶす人》︎2014年

今回は、新聞紙を主体に接着剤で固め、その上に主に青系統で着色している。先回は、赤が印象に残る作品だったが、今回は、ブロンズの様な青が主体。うっすらと新聞記事も見える。
ブルーシートを使った小山の上に、3体の異形の生物が乗っている。どれも皆、不安定な足場にぐらつきながらも必死に立ち上がり、空に向かって吠えているかの様だ。これまでが、牛を思わせる形態で、どっしりとした安定感を見せていたので、随分と変化を感じさせる。肌触りも、従来は、もこもこ感があったが、目の前の3体の皮膚は、ぬめぬめとべたつく様な湿りがある。





森田さんに聞いてみた、
-ブルーシートの山に載せたのは?
「アトリエで使っているブルーシートをそのまま持って来ました。普段どんなところで作品制作をしているか見せようと思って」
(※シートの下には、小さな粘土ドローイングの人形様のものも置いてあった。横にはバケツ等もおいてあり、アトリエにあるもの全部もってきて積み上げた様な山だ)
-(想像上の)動物と思うが、足が、3本~5本あるし、皮膚感も従来と違いますね。
「本当になかなかうまく行かず、基本から壊した事もある。(足5本の)これは倒れてしまうので大変だった。」(それで足を1本追加した?)
-新聞紙の部分を削り取る様な事を?
「中の支持体も、エイッて折ってしまった事もある」
「でも、これが最後なので多くの人に見て欲しい」
-え?最後とはどういう事ですか?
「立体は、これが最後で、今後は絵画をやろうと思っている。これまで描いていないけど」

そう聞いて改めて作品を見ると、作家の苦悩する姿の投影にも思えてきた。
個人的には、森田さんの異形の生物の感じが好きだったので、少々残念だが、今後の作品に期待しよう。
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