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TRIAD DANCE PROJECT 「ダンスの系譜学」

3人の女性ダンスアーティストによる「TRIAD DANCE PROJECT」は、振付の原点とその継承/再構築を同時に観ようという企画だ。
1人目の酒井はなさんは、「紫綬褒章」「舞踊芸術賞」等の権威ある賞を受賞しているバレエダンサーで、ミハイル・フォーキン振付「瀕死の白鳥」の公演も数多い。酒井さんの”生”「瀕死の白鳥」を、これも四家卯大さんの”生”チェロ演奏で観られるのは貴重な機会だった。フォーキン版の作品の初演は、1905年(頃)なので、もう100年以上も昔の話だ。当時のクラシックバレエの常識であった「跳躍、回転の超絶技巧と上へと向かう」振付からは大きく逸脱した、床にダンサーが沈み込む様な動きは革命的だった。だがそれから100年である。この公演の企画者は、演劇作家の岡田利規をして、「解体」を試みさせた。ダンサーが踊りながら発声するとは、驚きだった。セリフをナレーションで流すのでなく、ダンサー(酒井)が、岡田流の”リアル”な口語体で発声するのだ。しかも、全編ダンスを踊るのではなく、演劇的でコミカルな感じの動きとの組合せだ。バレリーナの酒井さんは、新たな試みに果敢にチャレンジしているのだが、見る側としては、ここまでやらせて良いのかとハラハラしながらの鑑賞だった。だが、それこそが岡田の狙いだったのだろう。現代のダンスのルーツとされ、確立されたメソッドと数百年の歴史を持つクラシックバレエを「高い到達点から否が応でも引きずりおろす(岡田)」ための「瀕死の白鳥」の解体なのだろう。次に進む為の「破壊(解体)と創造」。破壊の後の創造で、岡田が何を見せてくれるのか、この先もその活動に注目したい。
ふたり目の中村恩恵さんは、イリ・キリアン率いるネザーランド・ダンス・シアターに過去に所属しており、キリアン振付の特徴と言われる叙情豊かなダンスを見せてくれた。始めは、中村さん自身の振付による「BLACK ROOM」だ。中央だけがほのかに明るい舞台に黒いコートに白いマスクのダンサー(中村さん)が現れる。「ここはかつて私がいた部屋/白い壁そこには言葉が隙間なく書かれている/私が書いたのだ/私は独りぼっち/助けて誰か助けて・・・」暗い部屋の中で、身悶えするような女性の言葉が、ナレーションとして響く。ダンサーの白いマスクは、社会問題にもなっている引き籠りや、コロナ過で外に出れない私達自身を連想させ、胸に溜まった、発せられる事の無かった言葉たちの象徴に見える。人は辛い苦しい思いを抱えて生きている。暗転し、キリアン振付の「BLACK BIRD」が始まる。よく見ないと次の作品に移ったのが分からない程、スムーズに繋がっていった。「BLACK BIRD」の始めは、母親の子宮内の胎児の動きから始まるのだが、ここでは生まれ落ちた後の場面が繋がっていた。白いマスクを外し、ジョージアの伝統音楽にのせた舞いは、人生には、やさしさも希望もあると告げているように見える。中村の秀逸な舞台だった。
最後は、ウィリアム・フォーサイス・カンパニー在籍歴のある安藤洋子さんだ。フォーサイスは、それまでのバレエ技法の枷を外し、新たなダンスの地平を切り開いた振付家として知られる。その技法は、「多重心とオフバランスで踊る」「素早いステップ」「引っ張り合うパートナリング」等が有名だが、安藤のダンスを見て、要するにこのようなものかと納得した。フォーサイスの振付技法は、ダンサーに強靭な筋力やスピードを要求するので、ある意味過酷だ。しかし、その動きは鑑賞者の身体的な感覚に、直接響いてくる。だから観ていて面白く、ワクワクするのだ。フォーサイス振付「Study#3」で島地保武とのデュオを踊ったが、技巧に裏打ちされたスピードと力強さ、二人の絡み、観て楽しいとは、この様なダンスなのだろうと思う。
加えて、安藤は、「MOVING SHADOW」で、二人の新人ダンサーを加え、フォーサイスの振付を継承した新たな作品も生み出した。
これからダンスはどこへ向かうのだろうか。振付家やダンサーは、日々の探求に余念がないし、演劇作家の様な外部の者の参入もある。今、私達は、大きな変革の中にあるのかもしれない。コロナ過を克服した何年か先、目の前には全く違ったダンスの地平が広がっているのだろうか。
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鑑賞者の目で現代アートを探求

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